HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

トリヴァース=ウィラード仮説と男尊女卑の起源

「赤の女王」の中で、トリヴァース=ウィラード仮説が紹介されていた。

一夫多妻の動物では、条件にめぐまれた母親はオスを 多く産むのに対して、恵まれない母親はメスを多く傾向がある、という現象があるのではないかという仮説である。

トリヴァース=ウィラード仮説

人間でも、いくつかの動物でも、この仮説は検証されている。例えば、歴代の米国大統領の子弟は、圧倒的に男子が多いそうだ。ただし、前提がある。

トリヴァース=ウィラードの仮説の前提に立ち戻ってみましょう。

これは
・一夫多妻である
・オスがメスの奪い合いをするとき体の大きい方が断然有利

ほぼ日刊イトイ新聞-主婦と科学。

これは、出産前後の環境が整っていれば、結果として身体の大きな子が生まれるためだという。オスは多くの種において身体が大きい方が、より多くのメスと交わることができる。逆に、「一夫多妻」、乱婚系の種では、小さく生まれてしまうような環境においてはより多くのメスを産み、強いオスに選んでもらうことが有利となる。一般の動物では、条件に恵まれた個体と、恵まれない個体は相対的なものなので、種全体としての性差はほど1:1となる。男女の産み分けの技術を持っているのは、人間だけではないのだ。

そら恐ろしいのは、インドや、中国などでは出産前の男女の検査と人工中絶の技術により、圧倒的に男子が多くなっている事実。これまで歴史的には、動物と同じで、条件が恵まれていれば男子が多く、恵まれなければ女子を産むというパターンは人間でも当てはまった。男尊女卑など、条件に恵まれた上層階級のものでしかなかった。インド、中国の過去の研究によれば、恵まれない部族では女子を優遇する習慣があったという。しかし、文明が進み、上流階級の一般常識が社会全体を支配するようになり、前述のように圧倒的に男子が好まれる社会が到来してしまった。

結果、生じるのは圧倒的な男女差により、「あぶれ男子」が生じることとなる。その結果、数百年前にイギリスで起こったことがインド、中国、そして多分日本でも起こりかねないということになる。

イギリス人の昔の下層階級は死に絶えてしまったということを意味すると気づいて愕然とした。上層階級だけが生き残り、その一部が新たな下層階級になったと。

イギリス人はみんな上流階級の子孫 - HPO機密日誌

しつこいようだが、男尊女卑などごく近代で社会全体に普及してしまったひとつの偏見にすぎない。社会階層を是とするわけではないが、動物が億年単位の時間をかけて到達した性のシステムから敷衍して考えれば、トリヴァース=ウィラード仮説にかなった社会階層のそれぞれの歴史的な特性に応じた習慣を見直すべきではないだろうか?

「赤の女王」は常に走り続ける、変化しつづけることだけが、その場にとどまる、生存することが可能になるという意味。現在の社会階層すればも、赤の女王の全速力の疾走の結果にすぎないと考えれば、日本の超少子、超高齢社会すらも肯定的に受け止められるかもしれない。