HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

掛け算と足し算

昨日の初期値敏感性の問題は、実は社内の研修を受け持った時の話しから思いついた。自分が会社において自分と同僚の生産性を3%あがられるような仕事をするか、3%生産性を下げる仕事をするかで、人数を考えればものすごい違いになるという話しを書いた。

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同僚にまったく影響しないで自分のペースだけで仕事をするのだとすれば、自分が「1」の生産性をあげ、隣の同僚がまた「1」を上げるとすると以下のような式となる。

1+1+1+ ・・・ +1 = 1 x n = n人日の生産性

一人ひとりが5%余計に努力するとしよう。しかし、あくまで一人ひとりであって他の人間に影響しないならこうなる。

1.05 + 1.05 + 1.05 + ・・・+ 1.05 = 1.05 x n = 1.05人日の生産性

先日の研修では一人ひとりが5%の努力を自分のためでなく人のために使えと教えた。

1.05 x 1.05 x 1.05 x ・・・ x 1.05 = 1.05 ^ n 人日の生産性

会社のお互いへの相互作用があれば、それは掛け算になる。掛け算は、式の中のひとつの項はすぐとなりの項にだけ影響するのではなく、すべての項に「掛け算」されている。

実際の会社の中では、いくつかの手段を通して同僚の生産性を向上させることができる。組織化されなければ誰もが一人ひとりやらなければならない仕事を専門特化することで他の人の生産性を向上させる。あるいは、自分の生産性向上の策を自分の同僚と情報共有することも立派な生産性向上活動だと。いずれにせよ、会社で働くということは、同僚にプラスかマイナスの影響を及ぼすことなのだと。

ちなみに、無敵の「掛け算」でも、現実社会で5%の努力で相手に影響をおよぼすことができる範囲は限られている。ここが組織論のおもしろいところ。

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ロジスティクス式に戻れば、掛け算と足し算が入っている。

http://www.doblog.com/weblog/myblog/31550/2620656#2620656

非常に擬人的に語れば、同世代とは繁殖のために協力(掛け算)し、子孫とは存在する時間が違うので協力できない(足し算)というところが、うまく式に表現されていると解釈できる。この掛け算と足し算が入り込まれている非線形方程式の常としてもなんどもなんども次の項に掛け合わせられる係数a((繁殖モデルのロジスティクス式でいえば、kとr。)の影響力が大きいのだ。初期値がよくとも何度もaを掛け合わされることで影響は大概の場合減少してしまう。あるいは組織で言えば、初期値は選びづらいが後々aを変化させることはできるのだと。

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まあ、ほとんどの人にはなにいっちゃてるのという話であろうが、私からするとカオス/ブラック・スワン論と現実の自分の仕事が結びついた考察であった。