HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

バタフライ効果、初期値鋭敏性の前提条件

なんとはなしに、べき乗則、カオスについて興味を持っていた時に、バタフライ効果、初期値鋭敏性は広く存在するものだと思いこんでいた。しかし、冷静に考えてみれば、殆どの非線形式なり、自然界のプロセスは「安定」していて初期値敏感性を見出し得ない。蝶のはばたきで生まれる風の圧力と、台風の風圧の力で何万倍、何十万倍違うか知らないが、ほとんどの場合、数万倍、あるいは小数点以下4桁以下の観測値の違いで大きな結果の差が生まれるわけがない。

バタフライ効果を提唱したローレンツの)問い掛け自体への否定的な回答の例としては、科学ジャーナリストのブライアン・クレッグ(Brian Clegg)は、著書"Dice World: Science and Life in a Random Universe"(邦題:世界はデタラメ―ランダム宇宙の科学と生活)で、蝶のはばたきの影響は小さ過ぎて実際のところ減衰してしまうだろうと考えられる点、竜巻は局所的な気象配置が支配的である点などを根拠にして、バタフライ効果の基本的考え方は正当としつつも、「ローレンツの質問への答えはノーである。」と述べている[46]。ローレンツも講演中で、否定的な材料として、ブラジルとテキサスでは地球の半球位置が違うため大気の性質が相当異なっているので影響は赤道を越えられない可能性や、乱流状態の大気中では影響は広がるが穏やかな大気中では影響は広がらない可能性などを挙げている[47]。

バタフライ効果 - Wikipedia

例えば、本ブログでさんざんアナロジーとして扱ってきたロジスティクス式でも、初期値鋭敏性が生まれるのは係数が特定の値の時だけだった。自分でさんざんエクセルなどでいじってきて初期値鋭敏性は観測できなかったのに、なぜそれを自覚しないか?自分の鈍感さを痛感する。

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ロジスティクス式で初期値敏感性が観測されるのは特定の値の時だと。自分で過去のエントリーで書いてた・・・・。

a = 4 のとき
a = 4 のときは、区間[0, 1]全体で変動する。このとき、ロジスティック写像は全ての自然数k周期軌道が存在するが、それら全ては不安定周期軌道となっており、周期軌道に漸近することなく非周期で区間 [0, 1] を巡り続ける軌道となる[109]。この a = 4 におけるカオスは特別にピュアカオスとも呼んだりもする[110][111]。


パラメータ a = 4 のロジスティック写像、蜘蛛の巣図と時系列図、n = 500 まで、初期値 x0 = 0.3 の場

a = 4 のとき、初期値鋭敏性の指標であるリアプノフ指数の値は ln2 で[112]、写像の複雑性を示す位相的エントロピーの値は log2 である[113]。

ロジスティック写像 - Wikipedia

私はなんとはなしに広範囲な条件下で、ブラック・スワン、ほんの小さな条件の差で生まれる予測不可能な結果が生まれるものだと思っていた。そうではないのかもしれない。気にすべきは初期条件の小さな差ではなく、ロジスティクス式の係数の変化のような環境要因の変化であるのかもしれない。

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ブラック・スワンのような予想を超えたカオスの出現とは、いつどう変化するかわからない蝶の羽ばたき、初期値敏感性ではなく、より大きく、より危険な台風が生まれる空気の密度の変化、太陽から注ぐエネルギーの量の変化を気にすべきなのだ。多くのみなさまにとってはあまりに当たり前のことなのだろうが、私には非常に驚きを伴う「発見」であった。