HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

若い世代の時間拘束への反発の淵源

「ライフ・シフト」を読み続けている。本書によれば、これからはエクスプローラー、インディペンデントプロデューサー、ポートフォリオワーカーという生き方が増えるという。寿命が伸び、人生がマルチステージ化していく中でエクスプローラーの時期がながくなるのだという。

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)

エクスプローラーは、人生の意味や自分探し、世界を知る期間です。

例えば、旅に出たり、インターンシップをしたりするような期間になります。

【図解:3分で解説】「ライフシフト」のまとめと感想

人生50年時代で、なおかつ知的創造的な仕事をするために大学まで出ようとすれば、働ける期間は30年に満たない。その間に、出世もしなければならない、結婚もしなければならない、家も建てなければならない、老後に備えなければならないとすれば、迷っているひまはない。まわりがそうするように、ただひたすらに世間的に成功だと思われている道を進むしかない。

しかし、本当に人生100年時代が来て、しかも、七十代、人によっては八十代まで健康で元気な人生を歩めるようになるならば、20代は思い切ってエクスプローラーしてみてもいいじゃないかというのが本書の主張。それでも、40年、50年、働こうと思えば、働ける。ステージを変えるだけでいいと。

私のように「新人類」と言われた世代であっても、この主張には違和感を感じる。20代の時のような柔軟さ、吸収力を70代になっても保てるようには思えない。仕事の習慣、自分の専門領域の知識と技能の取得は、20代だからこそできる。日本の職場における職業訓練はなかなかのものだと私は思う。いまの私の働き方は20代の早いうちに身に着けたものだ。日本の失われた20年間のなにが不幸かといえば、この間に社会出た世代の職業訓練が十分ではなくなってしまったということだ。

クルーグマンが不況がよくないというのは、基本的には仕事を失う教師がでることや、職業訓練や、必要十分な教育を受けられなくなる世代が生じるからだと言う。

「リベラル」とは「小さきもの、弱きものへの慈悲」か? - HPO機密日誌

まあ、その違和感は一端おいて改めて若い世代の言動を見れば、職場での時間拘束への反感、仕事の内容や報酬よりも休みの多さへの志向は一目瞭然。これも、人生が長くなるのだからエクスプローラーとしての余地を常に持っておきたい、職業に一旦はつくがあくまで仕事をしながらのエクスプローラーなのだと理解すれば、まだ情状酌量の余地があるかもしれない。若者が職業訓練を犠牲にしてまで得た余暇は、たんなるリクリエイションとして浪費してしまうのか、リ・クリエイションとして自分を創造的に育てていけるのか、よくよく見ていきたい。なにかのヒントでも与えられるものならばあえてあげたい。

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