HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

租税回避は憲法違反

税金の問題は実に難しい。先日の内部留保金課税案をめぐる議論を通して改めて実感した。

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そもそも、納税は国民の義務。納税を回避する行為は明確に税法に定められていなくとも憲法に違反する重大な犯罪となる。

第三十条 国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負う。

日本国憲法第30条 - Wikipedia

北朝鮮のように国家の体を為していないと想われる政府でも原爆を開発できるほどの資力を持っている。国家権力は武力、警察力を独占しているが故に国民から強制的に税金を徴収する力を持つ。国家経営とは儲かる商売なのだ。国家と納税は切っても切り離せない。いや、国家とは武力と税の徴収力そのものだといっていいのかもしれない。先日見てきたギリシアの最古の文明の線文字Aも、解読してみれば納税関係の内容だったそうだ。まさに、国家、文明とは税金なりと。

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線文字は、納税書類と宗教的な文書だったらしい。解読できないのももっともだ。日本語で書かれていても、なかなか納税書類など解読できない。

ギリシアへの旅 〜クレタの平和 - HPO機密日誌

国家が憲法という形で国民に約束する人権だの、平等だのは武力、税金の後付けの話。フランスが革命に成功し、権力、暴力による納税の強制ではなく、国民の権利を認め、国民に納税をさせ、その上国民軍を編成した方が、強い国家、軍隊が作れると国家側が「理解」してからだ。年金、福祉だのも、元をただせば、兵士を後顧の憂いなく命がけで前線で戦わせるための道具立てに過ぎない。以下、自由、平等、人権も同じ。

日本国憲法は、修正条項を含む米国憲法を参考に英文で当初つくられた。そして、米国憲法はフランス人権宣言と共和制フランスの憲法をお手本にしている。人権宣言、フランス憲法は、フランス革命の結果生まれた。この現在の「人権」誕生の原点といわれるフランス革命は、ナポレオンによる国民軍の創設と表裏一体であることを忘れてはならない。フランス革命戦争で、フランスと戦った国々はすべて絶対王政であった。フランスは自国を自由で人権を保障された国民が守ることで、自国を守ったのだ。

日本人の人権は天皇陛下からもらった - HPO機密日誌

フランス革命以後の国家と税制の歴史を鑑みれば、意図的に税金を払わない行為は犯罪に値するとなる。どれだけ、法律が不平等であっても、どれだけ合理性に欠けても、納税は国家が強制する国民の義務。繰り返すが、納税違反は憲法違反。刑事罰に問われても文句は言えない。

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ただし、それだけ重要な納税であるので、単に国家という大食らいの化け物、リヴァイアサンベヒモスのためだけの税制では、現代の国民の勤労意欲は支えられない。国家側から見れば、会社組織は「国民軍」であり、勤労者は自由、平等、人権によって勤労意欲を支えられた「兵士」にすぎない。間違った税制では、経済の動力源たる勤労意欲を燃やし続けられない。現代においては、誰もが「国民軍の兵士」である自覚を失って、「自由、平等、人権は天与のものだ」と誤解してしまったので、資本主義という幻想における企業人、労働者を戦わせるために必要な税制が必要不可欠だということになる。

軍政下でも、民主主義体制でも、富は産まれる。僕らが考えるより、はるかにその時代、その場所にいる人は自分たちの生活を豊かにする方法を考えてきた。いまも、考えてる。国に富は生まれる。問題はそれをどう配分するかのようだ。こうした国々を見ていると、軍隊主導の独裁制開発国家の方が、西欧型の自由民権国家よりも運営効率がよいのではないかと考える。

独裁制開発型国家? - HPO機密日誌

国家の基本が軍隊と徴税であると考えると、税制とは国家の意思そのものだと想いたくなる。そもそも、どのような形の税制であってもすべての国民に平等なるわけがないのだ。ある人は介護で苦しんでいるだろうし、別の人は貧困からぬけだせない。資産をもっている人もいれば、収入がたくさんある人もいる。会社経営者もいれば、勤労者もいる。「あの人は金持ちだ」と人から見られても、実際は納税、社会保障費用負担で、ひいひいい言っている人もいる。

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租税回避すらも国家からすれば犯罪とされるのなら、納税の形態を決めるのも権力でしか決められない。福祉、平等といっても、政治権力による決定を覆せない。権力を持つものの意思は確実に税制に反映される。恐ろしいことだ。

統治されるしか生きる道がない国民としては、せいぜいが選挙というマイルドな「革命」でしか将来の税制に影響を行使することはできない。いまの時期であれば、まあ選挙いっとけとなる。でも、税金は一生懸命勉強しつづけるけど、租税回避と認定されない程度に。