HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

雨量の百年確率

ここのところ、大雨が降り各地で河の氾濫が続いている。それはそうだ、土木工学、開発行為の規制としては、はるかに少ない雨量しか想定していないのだから。この雨の降り方は以前タイで経験した熱帯地方のゲリラ豪雨の降り方だ。

Q5.50年に1回の24時間降水量は東京(大手町)では317mm、隣接する千葉県の船橋では240mmと、大きく異なっています。なぜこのような違いが出るのですか?

A5.雨の降り方は地形などの影響を受けやすく、隣接した地域でも大きく異なることがあります。アメダス地点の確率降水量は1976~2007年の観測データに基づいていますので、少なくともこの期間においては、東京と船橋で雨の降り方がそれだけ異なっていたということになります。

気象庁|異常気象リスクマップ 確率降水量に関するQ&A

最近の降水量は、東京、船橋などでも軽く「50年に1回」であるはずの上記の降水量を上回っている。気象庁の降水量に基づいて、開発行為や、河川の治水が行われる。治水などは、計画から実行までながい時間がかかる。20年前、30年前の降水データを使っている。50年確率の降水量、100年確率の降水量といっても現在とは全然違う。

たまたまググったら出てきた宮城県の基準の一部を引用する。これは自然公園内における開発行為の基準だ。

17 運用方針第3の2の(7)の洪水調節池等の設置は,次の技術的細則によるものであること。
(1) 洪水調節容量は,下流における流下能力を考慮の上,30年確率で想定される雨量強度における開発中及び開発後のピーク流量を開発前のピーク流量以下にまで調節できるものであること。また,流域の地形,地質,土地利用の状況等に応じて必要なたい砂量が見込まれていること。
(2) 余水吐の能力は,コンクリートダムにあっては100年確率で想定される雨量強度におけるピーク流量の1.2倍以上,フィルダムにあってはコンクリートダムのそれの1.2倍以上のものであること。

開発行為の許可基準に関する運用細則 - 宮城県公式ウェブサイト

建築の基準は、気象の後追いで決められる。実は、ほんの10年前まで30度を超えると、空調の室外機は正常に動かなかった。冷媒が逆に高温の外気を室内に拾ってくる有様だった。そりゃあ、最近のエアコンはヒートポンプ(EHP、GHP)をうたい効率がいいとなる。早晩、雨量に対する備えの基準もみなおさざるを得なくなるだろう。

「コンクリートから人へ」と世迷い言を繰り返した政党があったが、「人を守るためのコンクリート」なのだ。地域、地域で治水、開発行為がお粉割られなければ、人は守れない。


■補足

日経アーキテクチャに関連記事が出ていた。

芝浦工業大学システム理工学部環境システム学科の中村仁教授は次のように指摘する。「気候変動で従来の想定を超えるような洪水が起こりやすくなっている。河川管理だけでなく都市計画や建築レベルでの対策とも連携して水害リスクを低減する必要がある」

(中略)

水害対策には、2つの要求性能がある。100年に1度、1000年に1度といった頻度が低い水害から命を守ることと、10年に1度、20年に1度といった頻度が高い水害時において、財産を守り、被災後に生活を継続できるようにすることだ。

滋賀版・豪雨対策を見習え|日経アーキテクチュア