HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

⊿Γ≡ (思いっきりネタバレあり)

真夜中1時過ぎに睡眠時間を削ってまで観た。大変興奮した。

まずタイトルから。いうまでもなくギリシア文字。それも、数学と関係が深い。

⊿:デルタ、微分記号
Γ:ガンマ、ガンマ関数=積分
≡:イクシー、英語・数学文字のx

つまり、最終話のタイトルは、「xを積分し、微分する」となる。まさに、37次元から構成させる空間の物語の最終話を飾るにふさわしい。

人類の異方変換を企むヤハクィザシュニナを阻止すべく、品輪彼方らの力を借りて、密かに備える真道幸路朗たち。「双方の望みを叶える」という真道の策は、人類を正解へと導けるのかー?
拡がり始めたカドに世界が混乱する中、最後の“交渉”が今、始まるー。

http://blog.livedoor.jp/aya_g/archives/1066696965.html

言わば、人類という独立変数xは、異方変換という全「積分」されかかった、いや半ば積分されてしまった。そこで、後で述べる「驚き」によって中和化、「微分」によって元の秩序、xに戻ったと。それでも、変換、再変換されたことにより、異方存在という未来の方向の存在、「変換可能」であることを知ったと。いうまでもなく、積分微分は数学の上での次元の概念と深く関わる。0次元とも言える物体xの運動を積分すると一次元の運動が生まれる。更に積分することで、加速運動、二次元のグラフで表される運動となる。以下、n次元の運動であれ微分積分可能となる。

ひとつもどって、SFファンとしてのこのシリーズの見方。私は毎回、どんなハードSFからヒントを得て書かれたか考えるのが楽しみだった。

cakes.mu

このSFマガジン編集部のCakes記事の後を受けて言えば、最終話「⊿Γ≡」は「ハイペリオン」であったと。特に、四作目である「エンディミオンの覚醒」であったと。隠喩的に書けば、力の大半を失って言わばスリーパー状態だったエマノン存在が、異次元廻廊キューブ出現により全力で子をなすことが可能となったと。なにより全知全能の存在を驚かせなければならないので、視聴者くらいは驚かせないとと。

思えばブログを始める少し前、どなたにすすめていただいたかハイペリオンシリーズを一気に読んだ。読んでいるうちに風邪をひいて一週間くらいうんうんうなってた。ああ、年をとったんだな、もう読むべき価値のある本もないし、読み抜く力もないなとつくづく思った。

ハイペリオン (海外SFノヴェルズ)

ハイペリオン (海外SFノヴェルズ)

ハイペリオンの没落 (海外SFノヴェルズ)

ハイペリオンの没落 (海外SFノヴェルズ)

エンディミオン (海外SFノヴェルズ)

エンディミオン (海外SFノヴェルズ)

エンディミオンの覚醒 (海外SFノヴェルズ)

エンディミオンの覚醒 (海外SFノヴェルズ)

知恵熱らしい - HPO機密日誌

hpo.hatenablog.com

「伏線」について言えば、10話でエマノン存在が全知全能者から「見えない」空間を作れたことで張られていたとも言える。最終話の子供部屋は明らかに三次元空間ではない。

さすがネット民!と想ったのは、九話の時点で「ハイペリオン」を予感していた方がいたこと。

ameblo.jp

また、Danさんの昔のレビューで語られているように、ハイペリオンシリーズ自体が過去の名作SFが折り込まれている。ハイペリオンが「SFのSF」と呼ばれるゆえんだ。

本書には、実に多くの「これまでの名作」が織り込んである。しかしきちんと著者が消化した上で再構成しているので、本書から「ポロロッカ」((c)絶望先生)するのはかなり困難だ。それをきちんとやるには「ハイペリオン読本」のような副読本が必要ではないのか。

だから、先に本書の糧となった作品群を読んでおいて欲しいのだ。本書を読むのは、それらを思い起こす行為でもある。

404 Blog Not Found:中年になってから読むべき最高傑作 - ハイペリオン/没落/エンディミオン/覚醒

ハイペリオンが本作のモデルとなっているとまではいわないが、多次元入れ子構造になっている作品だとは言える。

某所で本作品が「ルール違反だ」という批判を読んでもう一度見直した。それでも、感想は変わらない。強いて言えば、全知全能存在でも被造物を愛することができるというキリスト教的、「砂の惑星」的存在、特異点の問題だとも言える。

hpo.hatenablog.com

最後まで、明確には語られなかったのは、この話しの裏に設定されているに違いない言語、文字の存在。「ヤハクィザシュニナ」を始めとする異方からの存在たちの名前、ギークな異次元からの贈り物の名前、それらを含む毎話のタイトル文字。「あなたの人生の物語」を思い出さざるを得ない。

hpo.hatenablog.com

このアニメの進行中に日本でも映画版「あなたの人生の物語」、メッセージが公開された。その中でビジュアル化された異星人の文字は、このアニメのタイトル文字と似ていた。なるほどと。

脚本の野崎まどという人物を知らない。しかし、相当なSF好きだと想う。

概要

2009年、小説『[映] アムリタ』で、電撃小説大賞の一部門として新設された「メディアワークス文庫賞」の最初の受賞者となる(有間カオルと同時受賞)。同作は、2009年12月、メディアワークス文庫の創刊ラインナップの1冊として刊行された。 『know』は第34回日本SF大賞にノミネートされた。

野崎まど - Wikipedia

本作は、CGと手書きアニメを見事にテレビシリーズの予算内で映像化に成功した希有な例だろう。

seikaisuru-kado.com