HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

自律型人工知能の法人化

人工知能の核心」を興味深く読んでいる。随所に羽生氏の明晰で深い洞察が書かれている。いかんせん、テレビの新書化なので対象は広いが踏み込みは浅いように想う。

人工知能の核心 (NHK出版新書 511)

NHKのオンデマンドででも見た方が早いかもしれない。

www.nhk-ondemand.jp


NHKスペシャル【天使か悪魔か 羽生善治 人工知能を探る】5月15日

本書の中で、一番印象的な指摘は、今後人工知能が自動運転や、介護などの場面に活用されるにあたってそのリスクを取るために、「人工知能の法人化」をすべきだということ。いまのところまだ人工知能に人格を認めるにはほど遠いが、その実用化にあたって「法人」としての責任を負う仕組みをつくるべきだと。コロンブスが大西洋に未知の海路を求めて出帆するころに、株式会社の仕組みが出来た。出資者が有限責任を負い、銀行家は融資を、出資を受けた組織は「法人」としてそれぞれの役割に応じた責任を負うという仕組み。これを今後未知の領域に入っていく人工知能の実社会における応用において活用できないかと。

今後ますます人工知能の「黒魔術化」は進むであろう。

驚かれるかもしれませんが、この「黒魔術」は人工知能の世界でもスラングとして定着しており、どうやって生まれたのか、あるいはなぜ効果が出るのかわからない技術の総称となっているのです。

「人工知能と黒魔術」(視点・論点) | 視点・論点 | NHK 解説委員室 | 解説アーカイブス

私の観点からすれば演繹の論理のみで進化してきた科学がようやく帰納の論理を使えるようになったことなのだとと捉えている。

人工知能の実現を通して、初めて西欧科学は帰納的手法を定式化できたのだとも言える。論理学、数学に代表されるように、すくなくともツール、手法としては演繹しか科学は仕組みを持っていなかった。人工知能、ネットワークのシミュレーションとは学習という帰納による発見の瞬間を人工的に生み出すことができたのだと胸をはれる成果ではある。ただ、この発見の瞬間になにが起こっているのかは、誰にもわかっていないとは言っておこう。

演繹と帰納、あるいは人工知能はヒューマンエラーの夢を見れるか? - HPO機密日誌

この「黒魔術」というブラックボックス、未知の領域を実社会に応用できるか興味はつきない。


■追記

この大変、興味深いエントリーにも「人工知能の法人化」に関する議論が入っていた。

www.slideshare.net