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HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

フランスの保守層

パリ、CDGでの乗り換え時に、ラウンジでたまたまある初老のご夫妻と会話になった。最初に"Merci!"、"Bonjour!"程度のあいさつでを交わして席に座った。恥ずかしいことにラウンジの軽食を私がこぼしてしまった。すかさず、ティッシュを奥様が差し出して下さって、"Pardon"とお応えしたところからお二人との会話が始まった。以下は英語で。

アラブの連中はますます過激になっている

「フランスには、昔から中東の人々が来ていた、住んでいた。昔は、フランスの文化になじんでて、女性は普通にスカートをはいて、かぶりものなどしなかった。最近になって、あのヒジャブをつけなければいけないとか、水着はこうでなければだめだと主張している、圧力が強まっている。そういうことは、自分たちの国があるんだから、そこでやれといいたい。文化は文化だ。多様性はいい。だが過度に自分の文化主張するなら、私たちも自分たちの文化を守らなければならない」と。

以前お邪魔した南フランスのマダムからも、テロに対するフランスの方々の憤りは伝わった。どうも、話しを聞いていると中東系の方々はフランス国内で、イスラムの人々に圧力をかけているらしい。ヒジャブを禁止するとか、ブルキニを禁止するとかは、逆にリベラルなイスラムの方々を正統性をおしつけてくる勢力から守る意味があるということをおっしゃっているように想えた。

若い連中は、フランス語もろくにはなせない。

お孫さんがいらっしゃるそうだが、孫にきちんと話そうとすると、「おじいちゃん、おばあちゃん、いまなんていったの?」と聞き返されるそうだ。なんといってもフランス語は、時制だけでも10個くらいある。ちょっと聞き取りきれなかったが、これが「現在、過去、受動態、命令法、この4つくらいしか使わないし、理解できない。あんたはフランス語を勉強しているといったが、昔と比べるとずっとフランス語はやさしくなっているよ。ラッキーだ」と。

「日本では『最期の授業』の話しが教科書に載っています。確か、中学の教科書でした。私もそのアルザス地方の話しを授業で受けて大変感銘を受けました。フランスでは言葉は文化だと、"Vive la France!"だと信じていらっしゃると信じていました。」と申し上げたら、「いまは昔の話しじゃ」とのこと。びっくり!

「私がここで、フランス語の授業をするのは、これが最後です。普仏戦争でフランスが負けたため、アルザスプロイセン領になり、ドイツ語しか教えてはいけないことになりました。これが、私のフランス語の、最後の授業です」。

最後の授業 - Wikipedia
今の若い連中は、哲学を持っていない。

ある意味一番びっくりしたのはこの話し。「今の若い連中は、哲学を持っていない」とご主人が。「確かいまでも哲学はバカロレアの必修ですよね?大学入るのに、受験科目ですよね?」と聞いたら、「いまの試験、学科の授業は専門に分かれていて十分に哲学を学ぶ教育が行われておらん。私も元々はエンジニアだが、私のころ、いまから4,50年前は、確かに技術系でも哲学が必修だった。大統領がかわるたびに教育制度は悪くなっている。」

フランスの政治家のリーダーシップはますます低下している

「アメリカの大統領選挙は今年の年末だが、フランスの大統領選挙は来年だ。そこに4人候補が立っているが、どれもこれもとるにたらん。シャルル・ド・ゴールジスカール・デスタンあたりまでは立派な著作もある、教養のある政治家だった。それ以降は全然じゃ。フランスには文化省がある。他の国にはない省じゃ。そこの大臣が先日、『最近読んだ本で印象に残った本は?』と聞かれ、『就任以来の2年間は急がして一冊も読んでいない』と答えた。ウェブだのは観ていると言っていたが、ウェブで情報を得るのときちんと本を読むのは全く違う。実になさけない。」

もう、これは説明はいらない。前の「哲学」の話しと並んで、どこの国でも「フラット化」が進み、同じような事態が進展しているように想われた。


いはやは、とにかくびっくりすることばかり。乗り換えの2時間ほどであったが、大変な教養と実績のあるご夫妻とソーシャライズできてうれしかった。フランス五間の方とソーシャラズコツとしては、経験的にフランス語が大してしゃべれなくても最初のひとことだけでもフランス語で始める努力をすることが大事かなと。フランス語圏の方はそれ以降、英語に切り替えても実に丁寧に接してくれる。あとは、言葉よりも自分自身の常識。常識があり、素直に人の話に傾けられる耳があれば、話しははずむ。

それにしても、話しをすればするほどフランスにもこういう知的な保守な方がいらっしゃるのだと実感した。