HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

空母いぶき 四巻

時あたかも中国軍艦の「接続水域」の通過が問題になっている今、本書が出た意義は大きい。

http://www.yomiuri.co.jp/politics/20160615-OYT1T50201.htmlwww.yomiuri.co.jp

中国軍艦の行動は完全に合法であり、日本政府の)従来のスタンス、航海の自由や上空通過の権利を重視し、中国の国際法の独自解釈に対抗してきたことからすれば、今回の抗議は筋が通らない。その意味で論外ともいえる抗議なのである。

なによりもおかしな点は、事件の本質と対応がズレていること。今回の事件は接続水域や領海の通過そのものが問題なのではない。にもかかわらず、そのことに抗議した点が対応としてピント外れだ。

冒頭にも記したが、日本として看過できないのは「尖閣ゲーム」のルールに中国が違反した点である。

尖閣問題では日中間に暗黙のルールがある。これは相互に無駄なエスカレーションを防止するといったものだ。「現地での対立には軍艦を使わずに巡視船を使う」や「政府は互いに国民感情を刺激することはしない」がそれにあたる。

中国海軍に対する日本政府の抗議は筋違いだ | 安全保障 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

「いぶき」の世界では、中国海軍が作戦行動を起こし、既に日本の領土を占領している。本巻では自衛隊による本格的な軍事行動が開始される。かわぐちかいじの作品なので、自衛隊は圧倒的な勝利を中国海軍に対してあげている。「質」が上回っているからだ。現実に、中国海軍が戦端をきるとすると、「量」で来るのではないかという恐ろしさがある。

もうひとつの「現実」は、海上保安庁という非軍事組織が必死に中国軍艦に対応していることだ。海上保安庁国土交通省管轄だって一般に認識されているのだろうか?

海上保安庁と海上自衛隊

http://www.kaiho.mlit.go.jp/shitugi/faq/faq7.html

以前、たまたま海上保安庁の方とお話しする機会があった。現場の緊張感の一端を感じさせるお話しをいくつかいただいた。もちろん、国土交通省の職員だ。そうなんだなとおもったのは、私が進学の時に防大が大きな選択肢であったことを伝えると、「ああ、もったいない」と言われたことだ。地域で少しはお役に立てる仕事をしてきたと自負があったが、そうか、国を守る立場の方からすれば「もったいない」ということになるのだなと納得した。

18才の時の防衛大学の面接で、「陸上自衛隊と、海上自衛隊、将来どちらを志望しますか?」と聞かれ、私は躊躇なく「海自です」と答えた。

「防共回廊」 第三章 東トルキスタンを救え - HPO機密日誌

話しがそれたが、「空母いぶき」の世界が現実の未来とならないことを祈るばかり。いや、そのためにいま行動を開始すべきなのだろう。