HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

「なぜ九〇%の人が家づくりに失敗するのか?」

読んだ。大変刺激的だった。

著者の市村博さんは、ハウスインスペクターというのだろうか、施主側に100%立つ建築士の仕事をしていらっしゃる方。構造の出身でいらっしゃるせいか、目線が実に的確。建築してから出てくる同業の方は、業界の悪口では「いちゃもん建築士」などと陰口がたたかれるような人もいる。そういう中で実にフェアな評価をされているように想える。

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業界側からすれば、顧客がどういうところを不安に思っていらっしゃるかよく伝わる本。材木が雨に濡れた場合のケア、基礎の立ち上がりのレベラー施工など、なるほどと想うポイントが網羅されている。Amazonの書評には「専門用語が多い」、「建築関係者は手抜きばかり」と書かれている。失礼ながら、本書に書かれた程度の用語は建築するにあたって顧客側も最低理解いただきたいレベル。むしろ素人にわかりやすく書かれているように私には想えた。昔の施主は大工や、現場担当者が舌をまくほどよく建築についてご存じだったし、明確な趣味もあった。言っちゃあ失礼だが、普請道楽なんて言葉もあるように、建築の施主になるのは旦那と呼ばれる方々だった。「手抜きばかり」と言われると大変心外。ハウスインスペクターというお仕事柄、市村さんのところに持ち込まれる案件はすでになんらかのトラブルになったものばかりのはず。90%、いや95%までは普通に施工され、普通に引き渡され、普通にお施主様が生活を始めている。5%は多いようにおもわれるかもしれないが、多少のことはあってもアフターフォロー、手直しなどを経て、99%、99.9%は問題がない。残りの1%、0.1%が市村さんのところに行く。そうした事例を集めた本なのでこの本の事例がアベレージだとは想われたくない。

いやいや、ついつい建築側のバイアスで書いてしまう。反省。