HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

世界は邪悪に満ちているか?

会社の同僚から借りて読んだ。

日下公人さんってもっとバランスの取れた方かなと想っていた。本書は徹底徹尾アメリカを叩いている。太平洋戦争も、コミンテルンソ連のゾルゲなどではなく、米国が引き起こしたと。米国の「邪悪さ」という指摘は、岸田秀氏の指摘と重なる部分もある。

なぜアメリカは敵を完膚なきまでに叩きのめさないと気が済まないのでしょうか。またインディアンとアメリカ人との歴史に返りますが、それはインディアンを完膚なきまでに叩きのめしたからです。アメリカ人はインディアンを完膚なきまで叩きのめし、かつ、そのことを正当化したため、それ以後、いかなる敵と戦っても、敵の立場をいささかでも考慮に入れ、敵の正当性をいささかでも認め、完膚なきまでに叩きのめす手前で中止したとしたら、かつてインディアンを完膚なきまで叩きのめしたのは果たして正しかったのか、そこまでやる必要はあったのか、などの深刻な自己疑惑に陥らざるを得ないのです。それが恐ろしいので、アメリカ人は、戦争となると、敵を完全に屈服させることを疑い得ない前提とせざるを得ないのです。

このためには、原爆の投下が東京湾への威嚇攻撃や、富士山の爆破消失では不十分で、広島と長崎、あるいは東京帝都に落とす必要すらあったと。

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トインビーも同じく米国の傲慢さに「警鐘」をならしていた。

1950年代以降のアメリカはアジア各地、あるいはアフガニスタンにおいても、現地とまじわらず、買い物すら米国本土から持っていた製品をPXで買うだけだと。アメリカの「防衛」のために帝国主義になりはてていると。実におごりに満ちた態度でいると。このままでは、各国民から自由を勝ち取った国だとみられていたアメリカが、「失われた自由の国」となってしまうと。アメリカ「帝国」である限り、マーシャルプランなどさまざまな「施し」を発展途上国への支援として与えても、帝国主義だとアメリカへの信認が失われ、世界中で敵ばかりになるだろうと警鐘をならしている。

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しかし、論調があまりに「日本礼賛、米国邪悪」という構図にはめられており、アメリカのデモクラシーの伝統をもう少し評価すべきではないかなと想った。

東郷平八郎がハワイに行っていたことは知らなかった。

■1893年
ハワイでアメリカ人農場主らが米海兵隊の協力でクーデターを起こして王政を打倒して臨時政府を樹立し、その臨時政府がアメリカに併合を求めた。

日本は急きょ、在留邦人保護を理由に巡洋艦「浪速」(艦長:東郷平八郎大佐)と「金剛」の2隻をハワイに派遣し、ホノルル港に停泊中の米艦ボストンの両側を挟んで真横に投錨してクーデター勢力を威嚇した。

東郷は新政権を完全に無視し、リリウオカラニ女王の側近とのみ接触。

アメリカのクリーブランド大統領はハワイ併合を見送った。

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インディアンを叩きのめしたのと同様に、なんの根拠もなく米国はハワイ王国を併合している。この半世紀後に、山本五十六パールハーバーを攻撃したことに喝采を送りたい気持ちになった。東郷平八郎の事績を山本五十六が知らないわけはない。

たまたまだが、ここのところなぜ成田に空港を作ったかを説明するには、日本がいまだに米国の植民地、支配下にあるからだと説明せざるを得なかった。

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座間市に用事があって行った。成田の比ではない米軍機の轟音の下、人々が暮らしてらっしゃるのを見た。日本は米国の支配下にあるのだとまざまざと見せつけられた。いまの政治の状態、いまの国民の考えでは、米国人が日本人を庇護してやっている打という傲慢さの下にいることしか生きていけない国になりはてているのだとは、本書を読むまでもなく実感する。