帰りの飛行機で「痛快!憲法学」を再読した。安保法案のどたばたの後であるいまこそ、憲法について考えるべき。
痛快!憲法学―Amazing study of constitutions & democracy
- 作者: 小室直樹
- 出版社/メーカー: 集英社インターナショナル
- 発売日: 2001/04
- メディア: 単行本
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本書にいわく。
戦争の放棄や武力行使の禁止を定めた憲法は、なにも日本だけではない。
そのことについて、詳細な調査を行ったのが憲法学者の西修氏。西氏によれば戦争の放棄を定めた最初の憲法は、1791年に作られたフランス憲法です。(中略)
以後、1891年ののブラジル憲法、1911年のポルトガル憲法、1917年のウルグアイ憲法と続くのですが、西氏の調査によれば、何らかの平和主義条項が憲法にある国は1998年時点でなんと124カ国もある。国連に加盟している国は1997年末で185カ国ですから・・・。
この124カ国で平和条項があるだけで、戦争に関わることを歴史的に避けられた国があろうか?日本だけが九条があったから戦争に巻き込まれなかったというのは、神話以前の大間違い。
また、とても重要なことに、日本国憲法の九条はケロッグ=ブリアン条約そのものであると本書で指摘されている。
第一条
締約国は、国際紛争の解決のために戦争に頼ることを非難し、お互いの関係において国家の政策の手段としての戦争を放棄することを、各自の国民の名前において、厳粛に宣言します。
第二条
締約国は、自分たちの間に起こるであろう、あらゆる論争や紛争が、いかなる性質であろうと、またいかなる起源によるものであろうと、平和的な手段以外によっては決してその決着や解決を求めないことに同意します。
現代語私訳 「パリ不戦条約(ケロッグ・ブリアン条約)」 - ポルフィの日記
id:elkoravolo さん、ありがとうございます。
これは本当に九条そのものだ。
この条約はその後の国際法における戦争の違法化、国際紛争の平和的処理の流れを作る上で大きな意味を持った。一方で加盟国は原則として自衛権を保持していることが交渉の過程で繰り返し確認されており、また不戦条約には条約違反に対する制裁は規定されておらず、国際連盟規約やロカルノ条約など他の包括的・個別的条約に依拠する必要があった。
不戦条約 - Wikipedia
本書にもこうある。
アメリカ議会では、外交と戦争に関する決定権は上院にあります。
不戦条約の批准についても、上院で審議がおこなわれたのですが、そのときに「この条約は国家がみずからを守る権利をも否定しているのか」という話しになって、議会が大もめにもめた。
そこでアメリカ上院はケロッグ国務長官を証人として招いて、その真意を質した。するとケロッグ国務長官は「自衛戦争は対象外です」と明確に答えた。
ということで、九条が否定してる戦争には、自衛戦争は含まれないというのが国際法上の解釈であると考えられる。この条文は個別的、集団的自衛権を否定するものでは全くないと。であれば、当然今回の安保法案、いやもう通ったので安保法も国際法上適法であるということになる。
この(日本の独立の契機となる1951年の)*1サンフランシスコ条約だが、同日ということからも明白なように、米国との間で結ばれた日米安保条約(Treaty Between the United States and Japan)と一体のものである。日本は米国との軍事同盟によって米国から国家承認されたということである。
安保法制が否決されてもおそらく何の変化もないだろう: 極東ブログ
本書にはまた憲法とは成文の条文だけでなく、自国の国民の民度、憲法の歴史といった非文である部分も含めて成立するのだと主張している。憲法があっても、それを受け入れる国民の側、政治家達の側の理解がともなっていなければ「憲法が死んだ」状態になってしまうと。
よくよく勉強したい。知は力であるとしみじみ感じる。