HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

三つの独白録

NHK特集「昭和天皇 二つの独白録」を見た。今更ながら、自分の無知を知った。

NHKスペシャル 昭和天皇 二つの「独白録」 [DVD]

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先日、HULUで見た「終戦のエンペラー」が大変印象的だったから。「二つの独白録」のDVDを求めた。

終戦のエンペラー [DVD]

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余談だが、この映画の企画が、奈良橋陽子さんだと知った。人の縁の不思議さがここにある。

宮内省職員として働いていた関屋貞三郎を祖父に持つ奈良橋は子供の頃から戦中戦後の事について祖父から聞いており、その影響でさまざまな資料を調べる中でボナー・フェラーズに目を留め本企画を立ち上げると、日本にいた経験もあるデヴィッド・クラスに持ち込む。

終戦のエンペラー - Wikipedia

この「二つの独白録」においても、マッカーサーの傍らで天皇東京裁判にかけるか、かけないかについて大変な貢献のあったフェラーズ准将と、外交官で天皇の御用掛を勤めた寺崎英成氏の奥さんのグウェンさんが親戚だというのも不思議なご縁。寺崎氏の物語は子供の頃、NHKのドラマで見て大変印象的だった。

マリコ (新潮文庫)

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もうひとつ、驚きだったことがある。昭和天皇は寺崎とフェラーズの「二つの独白録」以外に、もう一度「独白」をされていた。これにに関わった木下道雄氏の原稿によると、陛下が太平洋戦争についてより自由に語られた独白録があることがという。「二つの独白録」は、危惧された天皇の戦争責任を追及しようという米国民の意見の急騰や、ソ連などから天皇陛下が訴追されるという「緊急事態」がおこらず、戦後長く世に出なかった。どのような目的で作られたかはつまびらかではないが、三つ目の独白録、「聖断拝聴録」の全体も日の目を見ることはないのだろう。

 先ず我が国の国民性に付いて思うことは付和雷同性が多いことで、これは大いに改善の要があると考える。近頃のストライキの話を聞いてもそうであるが、共産党の者が、その反対者を目して反動主義者とか非民主主義者とか叫ぶと、すぐこれに付和雷同する。戦前及び戦時中のことを回顧して見ても、今の首相の吉田などのように自分の主張を固守した人もいるが、多くは平和論及至親英米論を肝に持っておっても、これを口にすると軍部から不忠呼ばわりされたり非愛国者の扱いをされるものだから、沈黙を守るか又は自分の主義を捨てて軍部の主戦論に付和雷同して戦争論をふり廻す。


(中略)


 しかし負け惜しみと思うかも知れぬが、敗戦の結果とはいえ我が憲法の改正も出来た今日に於て考えて見れば、我が国民にとっては勝利の結果極端なる軍国主義となるよりも却って幸福ではないだろうか。
 歴史は繰り返すということもあるから、以上事共を述べておく次第で、これが新日本建設の一里塚とならば幸いである。

昭和天皇、聖談拝聴録原稿(木下のメモ)③「結論」: 園田義明めも。