HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

鳴門秘帖 読了

ようやく読み終わった。なんとなんと、読み始めたのが1月18日なので半年近くかかっている。

読むのが遅いのにも、ほどがある。

それにしても、最後まできて見事にすべての伏線が解き明かされた。

『鳴門秘帖』(なるとひちょう/なるとひじょう)は、吉川英治の長編小説である。1926年8月11日から翌年10月14日まで、「大阪毎日新聞」に連載された。

鳴門秘帖 - Wikipedia

いまぐぐったら、1926年!まだ大正時代!100年近くも前の小説とはとても思えないほど、斬新な切り口で歴史を語っている。人の人情、女の情けもいまと変わらない。実にすばらしい読書体験であった。

ただ、お綱さんが・・・、あまりに不憫かな。



■追記

ネタバレを恐れずに追記しておこう。命がけで、いや、文字通り命を二度も、三度も捨てる想いで弦之丞についていったお綱さんがあまりに不憫。ひるがえって、お千絵はなにかしたか?なにもしていない。にもかかわらず、弦之丞と結ばれるのは千絵。同じ父親を持つ異母姉妹であるのに、この運命の差はなにか?氏より育ちだということか?

流麗に入り交じる町人言葉と武家言葉。まだこの時代までは、その痕跡が残っていたのだろうか。読んでいて、各登場人物のセリフが声で聞こえてくるようだった。たしかに、お綱と千絵では話し言葉ひとつとっても違う。千絵がいるはずのないところにたがために、江戸の与力を呼び寄せることになり、お綱がおなわになったというのも、町人と武家での生き方、文化の隔絶なのだろうか。

案外、本書あちこちに江戸から明治、昭和への文化の流れが見えてくるような気がする。