「禅とオートバイ修理技術」をネタに、ワインを片手に意識の組成について会話した。北イタリアな落ち着いた雰囲気のレストラン、美味しいお料理、誠実で知的なお相手との楽しく興味深い会話。とても幸せな時間だった。
- 作者: ロバート・M.パーシグ,Robert M. Pirsig,五十嵐美克
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しかし、正直この会話の最中、パイドロスの言う意識の組成とはなんであったかいまとなってはかなり意識が薄れていたことに気づかざるを得なかった。長い長い読書と、思想家の方々の後を追う思索の果てに、べき乗則が意識の組成の根底にあると結論を出したように記憶している。だが、会話の最中に明確にこれだと言えなかった。むしろ、坐禅でただ坐り、ただ行動するという、意識の組成など問題にならない自分の生き様が口をついて出た。
ブログというのは本当に便利なものだ。ちょっとぐぐれば、自分が何をどう読み、どう考えたかが簡単に出てくる。
ぐぐって思い出した。そう、現象的に言えば、意識など「身」の行動の後付けにすぎないことは現代心理学・生理学からも明かだ。
「私」という意識のつながりと、発話したり、手を動かしたりする身体全体の行動とが本来一致するわけはないのだ。「私」以前に身体全体のエージェントが共同作業で動いていて、意識に自分が決定していうと思わせるとより先に、手や足や声帯に指令を送っているのでないとタイミングが合わない。いわば、「私」という意識は、事後連絡しかいかない会社組織の「社長」と同じなのだと、彼は言って笑った。
パイドロス その4 〜「私」は社長にすぎない〜 - HPO:機密日誌
私がべき乗則、「ブラックスワン」、「禅とオートバイ修理技術」、「現代思想としてのギリシア哲学」に触れた到達した場所がどこであったか?それは、フラクタルとカオスの岸辺、意識という現象がべき乗則的に生成しつづける場所。古東先生が「ここだ!」と示してくださった場所だ。
そもそも世界は自らある。自ら自らをあらしめている。
自然宇宙みずからが自己の起源であり、自らが自己変化の担い手であり、自ら自分の始末をつけていく自己目的。その先もその後も−−−机上の空論としては議論できるとしても−−−、最初から問題にならない自然生起。つまり、<自ずから然か在る>だけ。
この発想は、自己組織化そのものだ。言葉を加えるまでもない。
パイドロス ふたたび 考証編 - HPO:機密日誌
そう、もうこれ以上言葉を加える必要はない。あとは、ただ坐り、ただ行動するだけ。