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HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

「人類資金」映画版(ネタバレありまくり)

なにせ「亡国のイージス」、「機動戦士ガンダムUC」の福井先生の原作、脚本だというので「人類資金」は観たい、観たいと想っていた。

夜の部にいったら、なんとなんと一人っきりの劇場貸し切りロードショー状態。

一人ロードショー

ちょっと観る前から、いやな予感はした。

お金ってなに?権力ってなに?って、テーマの設定には大変共鳴する。お金の機能とはなにか、バブルが起こるのはなぜか、べき乗則と金融経済の関係について考え続けてきた私としては、本作品のテーマには限りない興味を持つ。しかし、そのテーマを映画にするときに、「亡国のイージス」や「ユニコーン」のようにテーマとストーリーや、動画表現と統一性を持たせるのは、極めて難しい。小説として完結させて、その上でよくよく映画の尺に合わせて絞り込んだ脚本にすれば、もっとスリリングで、魅力的な映画となったかもしれない。佐藤浩市森山未來といった俳優たちも熱演している、実際の国連を借りた舞台も申し分ない、映画としての「絵」の見せ方も問題はない気がする。惜しむらくは、テーマとストールの密度が足りない。

以下、もっとネタバレ爆発させてしまう。要注意。



結局成功して奪い取った10兆円はどこへ行ってしまったのか?という疑問が応えられていない。映画の中だけでは、越中島に沈めたはずの金塊が引き出されてM資金になったのか、海の底のままでGHQとの交渉の中で米国からお金を引き出してM資金、財団としたのか全くわからない。「政策投資銀行」がM資金の表の顔だというのは興味深い仮説。仕手戦で「報酬」の50億円を確かに市場に投じたが、株価の吊り上げにに成功したのだからちゃんと回収できたはず。なのに映画のラスト近くで「ほら、俺50億使っちゃったじゃん」というセリフ。あまりに不可解。観月ありさ演じるMの従姉妹も、なぜあんなに簡単に寝返ったのか私には全くわからなかった。自分で自分の息子を死に追いやった仲代達矢演じる財団理事長、笹倉暢彦もなぜ財団を裏切ったのか?そもそも、10兆円もの資金を運用できるのに、なぜ台湾の資本家から資金運用を依頼されるのか?「?」があまりにありすぎる。

もうちょっと真面目に応えれば、「財団」に相当する、人々の友愛によって支えられている現実の団体は存在する。たとえば、ビル・ゲイツも参加するロータリーとロータリー財団だ。

ポリオの他にも、東京ロータリークラブの発案のカンボジアの完全地雷撤去の運動とか、大学院生への留学のバックアップとか、人の善意によって少しでも世界をよくしていこうという活動が日々行われている。しかも、基本「クラブ」なのでどこの国の援助を受けているとか、なにかのイデオロギー団体とも関係がない。もっといえば、各「クラブ」毎の自主性によって運営されている。エバンストン通りと呼ばれる全世界のロータリークラブ、ロータリー財団の事務局は、文字通り事務局にすぎない。兆単位とはいかないが、ポリオだけでも一千億に匹敵する寄付が集まり、執行されている。

それでも、世界は変わらない。「人類資金」の財団やMのように尖らなくとも、現行の自由主義経済と奉仕活動は両立しうることを示している。