HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

住宅の価値と「為にする」文章

結局、この長島さんという方の日経の記事は、不動産のインスペクションを普及させる「為に」書かれた文章だと分かった。

「マイホーム 買った瞬間、価値ゼロへまっしぐら」、「住宅の価値は減り続ける」。これを読んであんまりだと思った。当然、ブックマークコメントした。

この方は自分でデータをきちんと操作集計統計していない。しかもお役所から与えられた統計も古い。住宅の寿命はずっと延びている。 http://d.hatena.ne.jp/hihi01/20081121/1227438331

http://b.hatena.ne.jp/entry/www.nikkei.com/money/features/73.aspx?g=DGXNMSFK1104A_11102013000000

この記事を読むと、例の「金持ち父さん」の「自宅は負債だ」という論理を思い出す。どちらも、「為にする」文章だ。

金持ち父さん貧乏父さん

金持ち父さん貧乏父さん

「持ち家vs賃貸」の話しをどこかでしなければならない。ま、時間がないのでそれは今しない。ともかく住宅の寿命は既に25年ではない。

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各国の住宅ストックを年代別に分けるとよくわかる。日本には戦前の住宅建物が極端に少ないことが分かる。一方、1970年代以降、つまり40年より「若い」建築はよく残っていることが分かる。これは建築基準法の耐震基準が1971年、1981年と大幅に強化されたことの結果だと言える。また、技術的、仕様的な面からも1970年代、高度成長期の豊かさに見合ったものとなった。しかも、1970年代以降の建物はほとんど壊されていない。高度成長期に大量の建て替えの為にライフスタイルにあわないというだけの理由で破壊された頃とは事情が違う。ここをきちんと説明するにはもう少し広い視点が必要だ。「郊外住宅から駅前住宅へ」、「旧市街地から新市街地、ニュータウンへ」など議論したいテーマはここにたくさんあるのだが、いまは触れない。要は、住宅25年説は既に過去のものなのだ。いま立っている住宅のほとんどは、40年、50年と寿命が延び続けるだろう。

そうではないと、はてなIDコールでご意見をいただいた。

id:hihi01、レモン市場問題なので、平均として建物の寿命が45年ぐらいに延びてもそこに一定数の短命建物が混ざるだけで市場は下がります。近年の建物寿命が延びているのは長嶋さん(@nagashimaosamu)ももちろんご存知です。 http://htn.to/FXgRoG

https://twitter.com/lhankor_mhy/status/391463199683260416

この日経の記事をめぐる問題点をこの方はブログで見事にまとめてくださっている。

もっとも、日経の記事の長島さんもタイトルには驚いておられるとも。

なんかスゴイタイトルになっちゃったな・・・ マイホーム 買った瞬間、価値ゼロへまっしぐら :マイホーム選び ここがツボ:貯蓄・ローン :マネー :日本経済新聞 http://s.nikkei.com/17z3rin

https://twitter.com/nagashimaosamu/statuses/391382759551139841

すっぱいレモンには誰も当たりたくない。そりゃ、そうだ。

ここまでの前提において、きちんと最初に「昭和60年、1980年以前に建てられた中古住宅を買う場合はハウスインスペクションをきちんとした方がいいですよ、耐震調査をした方がいいですよ、耐震調査の結果開示はこれからの売り主の義務同然になりますよ、ハウスインスペクションも信頼できる公認の制度にしたほうがいいですよね」といった話から入るべきではなかっただろうか。「価値ゼロへまっしぐら」では、それでなくとも住宅25年説問題から低く評価されている中古住宅の評価がますますさがってしまう。

正直、ひどい中古住宅を買ってしまった方から耐震調査などを依頼されて、あまりのひどさに言葉を失うことがある。Is値という耐震調査の結果数字がここで書けないくらいの場合がある。逆に言えば、1981年以降の建物なら、建築確認書が残っているか、すくなくとも役所の台帳できちんと確認できるなら、寿命が25年ということはまずない。私自身が中古住宅を買うなら、絶対に耐震調査を行ってから買う。あるいは、売り主さんが開示しているものを買う。さもなければ、70年代以前のものは買わない。

 一方、1981年以前の旧基準の建物は、設計法が現在と異なるため、現在と同様な「保有水平耐力」に基づく方法で耐震性の検討を行うことができません。このため、耐震診断では建物の強度や粘りに加え、その形状や経年状況を考慮した耐震指標:Is値を計算します。

耐震ネット | 耐震性能とIs値(耐震指標)について

私の無理解、誤解もあるのかもしれな。日経の連載の今後の展開を興味深く見てみたい。

ちなみに、私自身は住宅の寿命が十分に延びていることを利用して、このブログエントリーで取り上げた方法で資産運用をすでに始めている。