HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

谷根千の「真昼なのに昏い部屋」

なぜ不倫小説に惹かれるのだろう。もはや、私は不倫などする必要も、資格もないのに。

真昼なのに昏い部屋 (講談社文庫)

真昼なのに昏い部屋 (講談社文庫)

谷中、根津、千駄木の情景が思う存分出てくる。ここのところ、「谷根千」を歩き廻っているのでジョーンズさんと美弥子さんの「フィールドワーク」の様子を存分に思い浮かべることが出来た。最初に入った猫の喫茶店は、ここじゃないかな?

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谷中散策 - HPO:機密日誌

「初音防災公園」も前を何度も通っている。この辺は、なぜか「初音」とつく地名がたくさんある。初音小路なんてのもそうだ。日暮里のお寿司屋も、ちょっと感じは違うが友人に連れて行ってもらった記憶がある。

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谷中

谷中の散歩の達人 - HPO:機密日誌

この懐かしい、愛おしい、山手線の内側とは思えないほどのどかな谷中、根津、千駄木で静かに物語りは進んでいく。美弥子さんはジョーンズさん惹かれていることを自覚しないまま、惹かれ合っていく。エロスの愛とはこのようなものなのか。「小鳥」と美弥子さんは形容されていたが、見事に家庭の生活という「籠」の中に没入していた。その小鳥が、エロスの力により籠の外の世界へ出てしまう。出てしまえば、もはや小鳥ではいられない。

もしかすると、谷根千という舞台設定から言っても、名前からいっても夏目漱石の「三四郎」と「美禰子」の「近代的自我」とやらを、江國さんは意識していたのか。三四郎と美禰子も、たんたんとした物語の底流にエロスの愛と、籠ならぬ「牧場の羊」が語られる。昨日も某所で熱く語ってしまったが、三角関係はエロスの力を激しく引き出す。