HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

国宝でお茶漬けを

以前、安宅産業の倒産に材を取ったドラマをNHKでやっていた。山崎努の熱演がいまも印象に残っている。

何度も思い出す印象的なシーンが二つある。ひとつは、ラストシーンで山崎努演じる江坂産業現地法人元社長にアメリカ人が「Are you Japanese?」と聞かれ、「No!」と答えるシーン。

[安宅産業現地法人社長]高木はハワイ出身の日系二世である。戦後、英語力を駆使してGHQとの折衝の末、財閥解体の指定を免れることに成功し、頭角を表した。「二世」「英語屋」のコンプレックスを払拭するためか、(高度成長期のビジネスマンには共通する特徴ではあるが)とかく大きな仕事を狙う傾向にあったようである。

もうひとつは江坂社主の美術品収集を任された担当者が、江坂産業解体のどさくさにまぎれて国宝級と言われる抹茶碗を持ち出して、自分のアパートでお茶漬けを食べるシーン。「茶碗なんてもともと庶民が使ってたものさ」とうそぶく。

安宅一族は公私混同も激しく、のちに「安宅コレクション」として大阪市立東洋陶磁美術館に、所蔵展示されている中国・朝鮮(高麗)陶磁器の膨大なコレクションは、英一が安宅産業で美術品部を作って購入したものである。

安宅産業破綻 - Wikipedia

実際、日本の美術品と言われるもののほとんどは庶民クラスで使われていたものが、美術的な価値を見いだされて銘品と呼ばれるようになったもの。茶室を構成する部材に、ダイアモンドがあるでなし、職人が一生を掛けたタペストリーがあるでなし、普通の竹や、板などごくごく日常のものが使われている。日本人の美意識とは、王侯貴族の美意識ではなく、日常の中で自分の美的センスを最大限発揮することに意義がある。

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