HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

「クレームを言い続けてもらわなくてはこまります」

ある経営者の方と食事をしながら、ホンダの話しになった。

松明(たいまつ)は自分の手で

松明(たいまつ)は自分の手で

その方が以前持っていたホンダ車でちょっとした問題が生じた。販売点と何度もやりとりをして、そのパーツ全体を交換したりもしたがなおらない。思いあまって、メーカーのクレーム窓口に電話した。若い女性が出たのだそうだが、途中でクレーム担当者が怒り出したのだという。クレーム担当が顧客対応で怒るのは反則だろうと思って聞いたら、全くの逆。

「販売店に気を使ってクレームを言うのをやめていただいては困ります。百回でも、二百回でもクレームを言い続けてください。ホンダはお客様のクレームによって進歩、進化してきました。これからもクレームから学び続けなければならないんです。お客様、どうかクレームを言い続けてください。」

この後、販売店からも連絡があり、その部品の製造工程の品質管理の問題があったことがわかった。本田宗一郎、藤沢武夫のDNAが生きているなとつくづく思った。「松明は」には、クレームや、販売不振からいかにホンダが学んできたかのエピソードに満ちている。もう歴史なので詳しくはかかない。ただ、藤沢武夫はこうしたクレームの時に、一人を叱らないと書いている。言うなら、大声でみんなの前でと。そして、自分の意思の通じた人間を一人、また一人と教育し、最前線へ送ったのだと。「事業づくりは人づくり」という。迂遠なようでも、自前主義、人財主義、現場主義をホンダは貫いてきた姿勢が伝わる。

よく学びたい。