HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

「魔笛」

初めて全体を見た。男と女、昼と夜、火と水、秩序と混沌、弱い心と強い心、さまざな対極がある。そして、よくいわれる魔笛の物語の中にたくさんでてくる「3」の数字が示すように、「2」から「3」へ変化する中でバランスがもたらされる。

魅惑のオペラ 5 魔笛 モーツァルト

魅惑のオペラ 5 魔笛 モーツァルト

タミーノとパミーナ、パパゲーノとパパゲーナのペアは明々白々な対極だ。「女の手から保身を」、沈黙、一度は女性からの誘惑を退けながらも終いには手に手をとって試練に向かう。あるいは、死を賭して相手を捜し求め、覚悟を決めて瞬間に子をなすべき女が現れる。

一方で、男性性、秩序を象徴するザラストロと女性性、混沌を象徴する夜の女王のペアが教える真実もある。男と女、秩序と混沌が一度は試練を乗り越え一つになっても、常に再生されなければならない。ふたつを結びつける対極性は、バランスを常に崩しながら、バランスする。いや、逆か。バランスしようとすればするほど、バランスが崩れていく。結婚生活でも、組織を維持しようとする努力も、国を統一する象徴も、すべては試練を乗り越え、これまでの流れを一度は死に至らしめ、再生されなければならない。

ずいぶん昔に「Prenom Carmen」というゴダールの映画を見たときに「男女の弁証法」というものがあるのだと思った。幻想以上のものではなかったが。いや、常に再生されなければならないという一番大切な部分を忘れてしまったからか。

四重奏がバランスを崩すか、崩さないかのぎりぎりのところで奏でられる。ここに対極のバランスがあるのではないだろうか。

ザラストロ    夜の女王    
タミーノ パミーナ
パパゲーノ パパゲーナ
秩序 混沌
憎悪
道徳 復習
三人の少年 三人の侍
イシス オシリス