HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

「デフレの正体」と我が闘争

すばらしい本だ。結局、日本の生産性、生産力がそれでなくとも過剰なのに、人口の動態によりこれから急速に消費が減って行くために内需不足から様々な問題が起こって行くのだと言うことがよくわかった。

デフレの正体  経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)

デフレの正体 経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)

不謹慎は百も承知ながら、「でも、そんなこと企業はわかってますよ」と申し上げたい。


本書によって促進された側面はあるにせよ、相続税の強化と「生前贈与」という名の高齢者から若年層への資産の移転はすこしずつ政策化されている。ただし、残念ながらというべきか、住宅、不動産関係が主になっている。

個人的には助かるのだが、問題は贈与が住宅や不動産の取得向けになっていること。贈与税の優遇も金額といい、対象といい家一軒分くらいは、相続させるけど、それ以上の金額は世代を超えて継承する必要なないだろうという発想が透けて見える。

相続税強化は次世代への資産移転促進税制か? - HPO:機密日誌

著者が指摘するように金融資産などを含めて、消費を刺激する資産の生前贈与も対象になるととてもよいと思う。ただ、金額ベースで言えばやはり住宅にまさる消費はない。金融資産で贈与が行われても、せいぜい車の数百万円、貴金属の数十万円がいいところではないだろうか?ブランドを育てるという意味では期待はしたいが、金額ベースでの内需促進という意味では住宅なのだなと。


所得について中小企業に勤めるものとして言えば、社員を守るためには中高年層の所得の伸びは抑制して、子育て世代の昇給減資を確保するしかない。好むと好まざるとに関わらず、「関所資本主義」から外れている中小企業は社員のリアルな需要に忠実でなければ生き残れない。中高年層も子育てを経た方々は、子育て世代の所得を伸ばしてやらざるを得ないことは説明すれば理解してもらえる。逆にハラスメントに慣れきった大企業の組合員などだからこそ中高年や、企業OBの欲望をむき出しにするのではないだろうか?


女性の社会進出が日本を救うくらいのことが書いてあるが、これまた私のまわりの女性はすでによく働いている。地方にいるせいか、働かざるを得ない状況の女性がかなり真摯に働いている。見ていて涙がでるほどだ。また、女性に限らずいまの60代は元気だ。先日、親族の会があった。父の世代は産めよ、増えよの世代でも格別に兄弟が多く半端ない数のいとこがいる。同じジェネレーションに属するいとこが60歳だと自己紹介していた。もちろん十分に現役でばりばりはたらいている。50代はいわずもがな。

うちの会社の定年は65歳に設定しているが、実質70才くらいまで本人が希望すれば働ける。いや、そうしないと中小企業ではこれまた人材を確保できない。ここが絶妙に微妙なのだが、高齢者世代に対して会社がどう処遇しているかを若年層はしっかり見ている。中高年から上にきちんと対応しないと、モチベーションは失われて行く。若年層に、永く勤務し、継続的に成長していってもらうためには、やはりロールモデルが必要なのだ。

年金のことでは誤解もしていたが、処遇的には段階的にカットせざるを得ないが、70歳まで働ける制度に早く移行してほしいものだ。

「生年別共済制度」は諸手を上げて賛成。


著者の藻谷さんと安冨先生に対談してもらいたいものだと想像しながら読んでいた。

経済学の船出 ―創発の海へ

経済学の船出 ―創発の海へ

そういえば、お二方ともほぼ同級生ではないだろうか?

実務に即した経済学の展開と、経済学の原理に対する批判からの展開と、「縁切り/縁結び」という大企業や、お役所の政策の硬直した状態の人的ネットワークのつなぎかえが必要だという意味では、非常に似た処方箋にたどり着いているように私には思えてならない。