HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

「関所資本主義」

衝撃的だった。結局、経済の要の誰もが通らなければいけない「道」を押さえて「関所」を作ることができた企業だけが「利潤」をあげられるのだと。ま、そもそも経済学には「残余」はあっても「利潤」はないってとこからおかしい。

経済学の船出 ―創発の海へ

経済学の船出 ―創発の海へ

安冨先生は、大企業と中小企業の倒産率の分析を通し、上場している大企業ではなんらかの「関所」を押さえているので倒産リスクが非常に少なくなっているのに対し、中小企業の分析では50年(600ヶ月)たっても新規開業企業の倒産リスクと変わらないことを示していらっしゃる。つまりは、中小企業は関所をもっていないので、ほんのちょっとした変化で生き残れたり、消え去って行ったりせざるを得ないのだと。

そして、形態的な分析から、「関所」の形成と維持にはなんらかの「権力」が関わっていることが、現在の巨大企業、巨大官庁では多いと指摘している。

ここで、石井こうきさんの話しがつながるとは思っていなかった。孫引きだが引用する。

私(石井こうき)は1965年から1971年までソビエト連邦共和国のモスクワ国立大学法学部大学院に就学した。私はそこで「ソ連における国家意思の形成」というテーマで研究に取り組み、社会主義システムの実態に触れることができた。
私が”鉄のカーテン”の内側に入ったのは、私がかの国にあこがれたからではない。じつは、私は、当時、ソ連を「官僚制国歌資本主義」の国と考えていた。(中略)
私は、日本の「ベルリンの壁」の向こう側を調べて行くうちに、かつて、私が実態を見てきたソ連の姿と今日の日本の姿が次々に二重写しに見えるようになってきた。国民にも専門家にもほんとうのところがみえない。権力が経済を浸食し、権力による分配経済の下、うわべの数字と裏腹に国歌破綻が進行する。(略)

ブログを始めた頃、石井こうきさんのお嬢さま、石井ターニャさんとお会いすることがあった。

このため石井こうきさんには格別の想いを持つ。

安冨先生は、このあと「関所」という「欺瞞」を持つ組織の中で働くことを活写される。それは、組織維持のための維持がなによりも重要視される場である。安冨先生のおっしゃる「ハラスメント」と「縁切り/縁結び」が適用されるにこれほど似つかわしい場面はない。が、不思議なことにこの章では「ハラスメント」で分析はしておられれない。私の読み込みが薄いのだろう。

もうすこし言えば、「縁切り/縁結びが中小企業では常に行われていると考えるのが大切だ。ここでの「縁切り/縁結び」が安冨先生がご指摘されるように、世の中のネットワークを結び直し、ゆっくりと社会の大きな変化にしたがって経済ネットワークを変革していく。補助金だの、政策でゆがめるべきではない部分がある。ハイエクの「ハチミツ」というのがよくわかる。

そして、常に創発が起こり続けるビジネスのモデルとして、「ブランド」をあげられ、コミュニケーションの分析へと移行していく。とても大切な章だった。