斉藤先生のお話で、手形が出てきてまさに蒙を啓かれた。つーか、地域とか、信頼とかについてライトニングトークしたつもりだったのに、参加された方の感想をブログなどで読ませていただくと、私の話しのテーマは「手形」であったという印象だったようだ。
裏書人として手形などに署名した者はその支払を担保する義務(遡求義務)を負う。
裏書 - Wikipedia
手形こそは、信頼のネットワークによって成り立っている。手形を受け取ることは、相手を信用するということだ。また、裏書して譲渡することは、譲渡する相手をも信頼することだ。万一手形がその期日に落ちなかったら、譲渡していても自分自身が債務を追うことになる。
地域通貨が、ある程度「顔の見える」関係性の中で中央政府がなく流通する貨幣であるのだと定義するのだとすれば、本来約束手形は立派な地域通貨ということになる。そもそも、法律に先んじて商習慣として成立していたということも地域通貨的ではないか。
一面、非常に危険でもある。宇野千代さんの自伝を読んだときにも、手形の恐ろしさを実感した。たしか、大変に売れた雑誌社を経営されていたのだが、資金繰りのために手形を乱発して、倒産させてしまったという話しだった。
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現代で、健全な会社を目指そうとしたら手形などそもそも発行していはいけない。しかし、国家権力によらず自分が信頼できる人々の間で通貨に換わる支払いシステムを持つということの意味は大きい。斉藤先生も、ずいぶん前からこのことにお気づきのようだ。
【國領】
(中略)
例えば、この設問の前半は、手形に裏書きするようにしているが、これは別に
公的に保証されているわけではないが、強い束縛力を持っている。
何で、貸す側は信用しているか。
(中略)
【斉藤賢爾】
設問の時に考えていたのは、前半は手形・手形法について。
手形法がある以外は国家権力が出てこない中の話。
裏書も、自分が書いていれば認められる。住所も居場所が特定できれば良い、
ということで判子も印鑑証明も何もいらない状態で、手形は有効でいろいろなことが出来る。
つまりは、手形のもともとの精神に立ち返れば、手形とは「あなたを信頼しますよ」という言明の集合体なのだ。まして、斉藤先生が先日のプレゼンで示してくださったように、ひとつの通貨の単位だけでなくとも、「たまご10個」とか、「誠心誠意を込めたマッサージ1時間」とか、価値のある行為や商品であればなんでも対象となるのだ。
この問題は、「べき乗則とネット信頼通貨」の勉強会をしていた私としては、追求しつづけたい課題につながるように感じる。
もうちょっと問題意識をもって「不思議の国のNEO」を読み直す必要がある。
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