HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

リンクの経済学と自己組織化臨界現象 link-based economics

「歴史はべき乗則」は、経済学にも当然応用可能だ。

歴史は「べき乗則」で動く――種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系科学 (ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ)

歴史は「べき乗則」で動く――種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系科学 (ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ)

しかし、田中秀臣先生が自己組織化臨界現象について語るとは思わなかった。

例えば大規模な組織の自己崩壊を、バクは本書でも紹介されている砂山の崩落を使って説明している。砂を一粒一粒積み上げていき、円錐形の山をつくる。最初は何の問題もなくどんどん砂山ができていくだろう。しかし山の斜面が大きくなっていくと砂が滑り落ちるかもしれない。次の一粒の砂がこの砂山に大崩落をもたらすかもしれないのである。これは自然現象や大規模な社会現象に適用可能だという。このケースでは何番目の一粒の砂が大崩落をもたらすか予測不可能である。バクは、自然界でも経済現象でも規模が大きくなるほど、不安定な臨界状態に陥り、臨界状態に達すると自然界の環境の激変や経済危機が発生することを指摘した。

2009-12-03 - Economics Lovers Live ReF

経済学で自己組織化臨界現象を考えるとき、「砂粒」に相当する現象の単位をどうするかが大切な問題だ。経済学はお金の流れを問題とするため、通常の考え方ではお金だと考えられがちだ。だが、お金ではないと私は考える。なぜなら、山が崩れるのは、砂粒というノード相互の摩擦というリンクが存在し、ある臨界量で「雪崩」(カスケード)に至るからだ。お金そのものにはリンクの大きさや密度を表示することはできても、リンクする力そのものはない。また、自己組織化現象で見いだされる生成と消滅を繰り返すリンクのように「ある」か「ない」かではなく、お金は量ではかられる。私は家計や企業や政府といった経済主体をノードとし、その取引をリンクとして、ネットワークとして解析してべき分布を導くべきではないかと考えている。*1これまでのようにお金の量の集積としての家計や企業ではなく、100のノードでも、一千万のノードでも、組織をノードのリンクの塊としてノードの行為を表現できる。カウフマンが言うように巨大なノードの塊は、巨大分子と同様にたくさんのリンクを成長させることができるし、引用させていただいた部分にあるように崩壊の可能性も高くなる。逆に、個人で晴れるリンクは少ないが、急成長の可能性と一定のニッチにおける安定性がある。ここで、べき分布の指数をシミュレーションなどによって求めることにより、はじめて不況になっても一定のカットオフラインまでは企業を救うべきか、これ以上はリンクを一旦解いてノードの新たね生成を待つべきであるかを政策決定できると私は考える。

経済論戦は甦る

経済論戦は甦る

この意味で、「経済論戦は蘇る」は自己組織化臨界現象から読み解かれる部分がある。

もう少し言えば、いつ起こるかは予測不能でも、ノードとリンクの塊である経済ネットワークにおいてブラックスワン的な立ち現れ方だとしても、一定の現象が起こるか起こらないかはシミュレーション可能であるはずだ。そして、ブラックスワン的な立ち現れ方こそが因果律の源ではないかと考える。つまりは、すべては奇跡的な確率で生じているのだ。ただ、その時間の単位が量子力学的に短いのか、宇宙論的に永いのかの定はないだろうか?

*1:リンクの継続時間によってさまざまなレイヤーを想定できる。繰り込み理論、フラクタル同様、どのレイヤーでも、同様に自己組織化臨界現象が立ち現れるはずだ。