私には源氏物語を語る資格など全くないのだと知った。
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明石から戻って、若いころからの恋人たちを自分の館で面倒をみるようになって、めでたしめでたしで、あとは平平凡凡と話が進むものだと勝手に思い込んでいた。いやいや、ここから先こそが元の頭の中将との親子みつどもえ、よつどもえの権力闘争というか、絡みあいはあり、年をとってからヒステリーの妻から逃げるように若い恋人を略奪してしまう髭黒の大将ありと、女ばかりでなく男のさまざまな姿も描ききっている。
やはり、源氏物語が「紫の物語」と言われたというだけあって、女性としての紫の上は見事としかいいようがない。「あさきゆめみし」では晩年まで苦労する姿が描かれているのだが、与謝野源氏だとどうなっているのか楽しみだ。
なにより病がいまよりも身近であり、死に近かったことは改めて感じる。祈祷などが病への対抗手段として描かれているが、実際精神的なものと身体はもっと近かったのではないだろうか?六条の御息所も活躍を見せてくれているし、実際人の恨みのエネルギーというか、業というか、なにかもっと違った形であったのではないだろうか。近代の医療技術の発展と心と身体をよくここまで分離できたものだと、改めて感動する。