HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

生物と無生物のあいだの欲望

福岡先生の「生物と無生物のあいだ」で、生物の定義を「動的平衡(dynamic equilibrium)」のプロセスであり、単に増殖するということではないとする考え方は、カウフマンからの発想ではないだろうか?炎が燃えながら、炭素も酸素も常に入れ替わっているように、生命のほのおも数日、数か月で入れ替わりながらも「動的平衡」を保ち続ける。この「炎」こそが生命なのだ、と。

カウフマン、生命と宇宙を語る―複雑系からみた進化の仕組み

カウフマン、生命と宇宙を語る―複雑系からみた進化の仕組み

生命とは動的平衡だととらえると時間的に連続していく過程こそが生命なのだと気付く。この観点に立つと、10年来抱えてきた疑問が解けるように思う。その疑問とは、「産めよ、ふえよ、地に満ちよ」という命題が達成された後、人はなにを望むのか?ということだ。

生命の本質が自己増殖であれば、人間はすでに地に満ちた。生物としての使命をすでに遂げてしまったわけだ。

もし生命の本質を動的平衡なのだととらえれば、生命とは時間軸の展開なのだととらえることができる。永続することだ。

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

が客観的時間の感覚を持ってしまったがゆえに、空間という実に具体的な存在から、未来へ未来へと続く自分のイメージをもったことが人間の認識そもそものはじまりだったのではないだろうか?

この問題を考えると、人類の種としての目的は一体何なのかということに帰着する。

第一命題は「生めよ、増えよ、地に満ちよ。」でこれはとうの昔に達成してしまったといえる。

人類の競争力または「人間=最悪の環境汚染源」 Humanity: HPO:個人的な意見 ココログ版

あれ、福岡先生のお言葉は違う言葉だっけ?wikipediaの「動的平衡」とちょっとイメージが違うなぁ。

A dynamic equilibrium occurs when two reversible processes occur at the same rate. Many processes (such as some chemical reactions) are reversible and when at dynamic equilibrium the forward reaction will occur at the same rate as the reverse reaction such that there is no further change in concentration of reactants or products.

Dynamic equilibrium - Wikipedia, the free encyclopedia

■追記

なんか感動!

今月の日経サイエンス (2007/09) に“生命の起源 RNAワールド以前の世界”という記事が載っています。生命として振舞っているものを RNA 起源のものに限ることの根拠は薄弱なんじゃないか? 生命の定義はもっとひろく取れるのではないか? といった説のようです。
記事の結語にあるカウフマン Stuart Kauffman の引用文が、生命というもののリアルなイメージなのじゃないかとも、考えさせられました。




「私たちは宇宙の中に住んでいるだけでなく、まだ見ぬ仲間とその住処を共有している可能性が高い」。

福岡伸一著「生物と無生物のあいだ」: ホットコーナーの舞台裏

(強調はHPO)