私は、若い頃、自分は歴史に残る人物になるのだと暗黙のうちにうぬぼれていたのだと最近感じる。ま、どうしようもない幻影をひきずってきただけといえばその通りだ。
40の声を聞いて、なんか心底自分に幻滅した。自分がこの先どうころんでもフツーの親父でしかないことがよく分かったからだ。体調も悪かったし、こんなにつらい夏はなかったように思う。
古くからの友人と会った。私と同じ年だ。
「この先、歴史に残る仕事ができるわけじゃない。」
別れ際にふっといった友人の言葉が腹にしみた。彼もまた人生のつらさと妙味を腹の底から味わっているのだろう。