HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

多様性と冗長性

ディアスポラ (ハヤカワ文庫 SF)

ディアスポラ (ハヤカワ文庫 SF)

あー、どうも思考のしっぽを今日は逃しまくっている感じがする。アフォーダンス、意識、共進化あたりにこのSFが示している問題が接合しそうが気がするんだけど、どうもまとまらない。

なんつうか、人間がコンピューター上の存在に成り果てることが仮に可能になったとしても、純粋な思考という形では存在しえない。なぜなら、あっというまにエントロピーというか、適応度地形といか、いきつくところというか、安定性の地獄みたいな状態に陥ってしまうから。この小説で、恒星間の航行に使われる船が本当はラグビーボールくらいの大きさしかないものを、はるかに大きな船としてシミュレーションしながら、人口知性となりはてた人類の子孫がメンテナンスするというところが、その典型だし、ビアンカという登場人物の様々なヴァージョンの一人が画期的なアイデアを思いつくというのも、その具体例であろう。

一人一人の人間というものが、ごく単純なパラメーターで表されてしまっては、多様性があっというまに失われてしまうわけだ。無駄だとも思える冗長性の中にこそ、進化がつきることなく続くためのタネがある。この辺が、カオス的というか、ネットワークにおいて生じる非線形性の問題なのだと思うのだが、うーむ、説得力のある言葉に変換できない。