HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

glocom 2005

■世代交替

例によって偶然を越えたものを感じている。ほとんど内容を知らずに申し込んで、8月21日の今日参加したわけだが、このフォーラムは、実質公文代表が世代交替を行うセッションであるということだ。公文代表は今年古希を迎えたという。今日、私は代表権を前社長から譲り受けたが、前社長は今年古希だ。同じ昭和10年から30代へのバトンタッチがいま行われているということに偶然を越えた符号を感じる。実は、午前中に仕事でお会いした会社の代表の方も前社長=現会長とほぼ同じ年代で、私のほぼ同じ年代の後継者に経営を譲ることを考えていると言う。

あ、そうそうこれまでの10年とこれからの10年ということだが、私が会社にはいってちょうど10年だ。

多分、これはいまの日本の構造的な現象なのだ。それは、敗戦からの立ちあがりであり、現在の産業構造がいつ構成されたかということであり、教育制度の変遷によるだと信じる。

この日本の「世代交替」の時期に責任をとる立場になれたことを純粋にうれしく想う。

■新しいGlocom

研究と事務局の二層構造。

ちなみに、「Bauhausu」って「美の家」じゃなかな?「建築の家」?

認識科学+設計科学=創知文化?

のぞむどっとこむの吉田社長さん:電通総研出身
   IT=individual / team
   ブランドとは、社会との信頼
   個人のブランド=仮名、実名問題
   成功自体がくびきになってしまう=苦悶の時代、公文の時代?
   周辺ぎりぎりが楽しい
   知的エンターテイメント:プロレスの感覚、プロレスの仮面、バトル
   企業人の研究参加ができないか?
   女性が参加できないか?

■情報社会の合意形成/「不安の時代」を越えて

○東さん

・情報社会に合意はいらないのでは? = 鈴木議員
・設計=デザイン : 情報社会の設計

○吉田民人先生

・「なめらか」<>最大の壁=宗教 
   → 宗教学会のプラットフォーム=スプリクチュアリティ
・より大きな枠組みの中に位置付ける
  人間の社会において設計とはなにか?
   宇宙の秩序=法則により生成する
   人間の社会は設計により作られる
   人間の社会には経験則はあっても法則性はない
   その代わりの設計図があるだけだった
   設計図だということが自覚されていなかった
   =これまでは広い意味での慣習法、自然法だった。
   実定法
   あらゆる領域で設計が姿を表してきた
     家族、組織、社会
   自覚されてきたのが情報化社会の特徴だ

  設計の問題
     設計主体の設計
     設計により出てくる新しい=プログラム 従来との衝突
     伝統的に設計はもく的関数の最適化だった
       =HAサイモン→満足化を選んで最適化を捨てた
       現実には、満足しているけど最適ではない状態
         若干の選択肢の中から選ぶ=非完全情報状態
           e.g. アマゾンの書籍選択
         逆に最適だが、満足がない=与件を変えるしかない?

  情報化社会の設計と、情報化社会以外の設計の違い
    インターネット空間と空間外の設計
     特徴をどうとらえるか?
      2つの軸=4つの領域
       集権的で委任型 = e.g。 はてな
       分権で参加型 = インターネットで(のみ?)成立可能
         次から次へ作ってく
         多様性が明らかに一番大きくなる

     ネット固有
       シミュレーション
        コンピューターでシミュレーション可能になった 
          = 相互作用の取り扱い
          例 計量経済学

    グローコムの設計

国領二郎先生

・情報システムの活用という話しをしてきた
・技術の活用という観点、技術指導の社会設計? = そんなに単純にいかないよ.
・「デザインする」というアプローチ
  人工物としての技術と社会のシステム
= 目的に対する合意が必要 → 合意形成自体を設計する
   「気になる現象」の発見 → 解決 → サイクル 
アーキテクチャ=人工物設計 : 社会学系は出てきた技術を後追いしてるだけ?
=モジュール間の役割分担およびモジュール間連携の方式(インターフェース)のルール
・何をデザインするのか?
   社会はデザインするものでなく、出てきてしまうもの
   物理的に形成可能なのは、プラットフォームでは?
   例. プラットフォームビジネス
       

誰もが明確な条件で低今日を受けられる小員やサービスの供給を通じて、第三者間の取引を活性化させてあり、新しいビジネスを起す基盤を提供する役割を詩的なビジネスとして行っている存在のこと.
   例。MITとハーヴァードの論争=本当にネットは中抜けか?信頼性の問題.
・プラットフォームはせんじつめれば、言語空間だ.

・問題提起=法則性というやつがあるかないか?
    相互作用の中から産まれるパターンがあるか、それに法則性があるか?
    べき乗の法則なのか?

・制度、誘引、技術のデザイン = 情報共有のメリットをビジネス、社会モデル化する

鈴木健さん 「なめらかの社会の設計」
・専門:複雑系からの認知科学 → 趣味が忙しくなってしまった
グーテンベルクからフランス革命 = 300年
・アラン=ケイから300年後を考える。
・インターネットが出ても社会はまったく変わっていないと考えている
・なめらか=シグモイド関数(f(λ,x)=2/(1+e^-λx) - 1)
   ステップがある。ステップが拡大する壁になる。
   フラット=分化が発生しない。欺瞞?
   ステップでもフラットでもない「なめらか」
・なめらかでない概念
   内側と外側
   敵と味方
   ネットとリアル
   生命と機械
   ネットとリアル
   人工と自然
   いきるとしぬ
   私は私、あなたはあなた
  オートポイエーシスモデル=開放系
・組織の境界がシグモイド
・ミューラー=リアー図形:錯視だが、正解だ。建物の中と見るか、外と見るか
  知覚を再構成する社会のOS
   社会システム ← → 知覚 
PICSY
   対立概念 SECSY:決済貨幣
   購買力の伝播という仕組み
     評価に応じて購買力を伝播させる
     行列計算で解くことができる = PageRankと一緒
     社会に対して貢献している人に貢献すると高い評価がでる
     例 松井ひできにラーメンをごちそうしたおばちゃん
   インターフェースとしてカンパニーの導入
・貨幣レベルにおいて組織、経済をヴァーチャル化できる
・具体例
  社内人事評価システム

公文俊平先生
・50年前:社会科学は自然科学と違って実験できない。
   ヒットラー後は社会実験などしちゃいけない
     悲惨な結果を招いた
   計画に対する過剰な期待があった。
     破産した
 =人間の浅知恵では社会の実験、計画などできない。
 この悲惨な実践が20世紀だった。
・マーケット志向を産んだ
・「設計」が最近でてきた=これは社会主義の復活か?
・人間は実験したくて、計画したくてたまらない存在
・これまでとは違う形の設計が可能な条件が整ってきた。
   シミュレーション、ゲーミング
・政府、大企業でなく個人が設計をして相互作用するようになった。
   知的なエンパワーメント
・古いプログラムとの整合性の問題
   更地に絵を描くことはできない
   昔計画といって失敗したからといって設計をあきらめてはならない
・現在の情報社会=人間型、参加型の設計がネット上で可能になってきた
   しかし、成熟するとそうでなくなるかもしれない
   常に吉田先生の「分権参加型」でなくなる可能性があることを忘れてはならない
アーキテクチャ(国領)をした時、その結果についてどこまでわれわれは知ることができるか?
   経験則:おこりえることの範囲。どこまで自身をもっていえるか?
   われわれの知識はそれほど大きなものではないということを自覚すべき。
   → フィードバックが宿命
・プラットフォーム:
    あるパターンがでてくるだろうけれども、うまくパターンを予測できるかもしれないが、きれいに予測できない、しばしば間違うかもしれない。
    ローカルなルールはできるが、創発と同じで結果を操作できない



[問題のまとめ]
・「情報社会に合意形成が必要か?」という問題 : 
    価値を共有しないポストモダン
    コンセンサスがないというコンセンサスのみが存在する
    価値が多用化してもプラットフォームは統一化していくという歴史の流れ
    二層構造がはっきりしている。
・吉田先生 : 
    満足と最適化の差:認知限界の問題
・国領先生 :
    プラットフォーム:相互作用を活性化させる。
    ネットだけでもビジネスは成立しない。孤立化するエージェントを結びつける。
    分裂と統合の問題のひとつの解答
・鈴木さん:
    一人一人は商売をしていても社会全体に貢献する。
    ISEDで「はてな」の近藤社長:クレーム処理システム
・公文先生:
    シミュレーションというオルタナティブがある。
    トライ&エラーができる。
・GLOCOMの方向性

○参加型分権型の問題
・公文先生:
   いいかわるいかという考え方を別にして、参加分権型がいつでもいい結果を産むかはわからない。
   確率は高そうに想う。
   競争が独占を産むこともある、独占は独占でいい場合もある
・吉田先生:
   委任よりも参加がいい、集権よりも分権がいい
   テクノクラットのグループ
   対立:計画集権=社会主義、参加型=民主主義・自由主義
   → イデオロギー的に捉えられてきた
   例 小泉首相自民党内では集権的だが、国民全体では参加型である。
   参加分権からいえばネットは特徴的
・国領先生
   プラスとマイナスがあるのは確か
   デザインの観点から分権がすぐれているわけ
     場面で発生する情報量が増えている
     グーテンベルク以来配るコストは下がってきたが、集めるコストは高止まりだった
     今は、場面から情報を発生、発信するコストが大幅にさがった。
     → このため中央集権的なテクノクラートで対応できない
   場面場面での判断:現場にマクロ感がなかった。
   経営学的な観点から言えば、分権的で「うまく」できる仕組みができた瞬間に決定的な差がうまれる
   創発の価値をいかに内部化するか?それを取りこめた組織が絶対強い。

・公文先生:
   ネットでも分権参加型でスーパーマン、独占が産まれた
   コモンズの貧困化の問題?
   あらゆるものが試され、選択され、少数のみが生き残る
   → べき乗則的な現象か?
   繰り返し、繰り返し

・鈴木さん
   べき法則でロックインされてしまう
   資本の論理:
     大企業病、小さな会社の強み : 大企業は小企業の利点を行かせる
     グローバル資本主義での独占
   これを貨幣レベルで解決するのが、PICSY : 大きな企業を持つこと自体
   倫理的なものにインセンティブを持たせたい
     経済がグローバル化することをヴィジュアル化したい。
     本人が倫理的に動かなくとも、公共の福祉につながる。
     経済倫理をサポートする。

・国領先生
   グーグルか、Yahooか、??? : プラットフォームの独占
   いくつかの基準を設けるべき
   単純なマーケットシェアでなく、周辺市場までの独占をさける
   
・公文先生
   一義的にいかないなぁ、という感じ。
   委任しているつもりでなく委任してしまっている。
   参加する気持ちすらないユーザーが増えている
   スターリンが中央集権のきわみだった
     しかし、気がつくと各象徴毎の分権につながっていた。
     トレンドを単に延長して、計画としていた
   
・国領先生
   意識的に参加するか、しないか。
     例 インターネット上の食品の安全性に対する姿勢の実証調査 
        = 二極化の姿
        → とことん調べる人と、ブランドを盲目的に信頼するユーザー
   押しつける権利はない。
        → 情報を開示している会社は信じられる。情報の信頼性、正確性までは問わないという姿勢。
    「買う」ことは匿名の投票行為だ。
    「外部性」の問題 = 痛み、コストをいかに内部化するか?
    垂直統合がいかに起こるか?
      川上でやったことが川下でやってもよい
   鈴木さんの主張は「内部化」という観点からありうる。
   内部化を匿名の状況でできるか?
      (PICSYでは)取引の情報がすべて開示せざるを得ない

・公文先生
   参加ということ自体が価値か?
   手段でしかない。
   無理に最適化することでコストがかかるのなら、無理にやることはない。

・国領先生
   情報のリテラシー
   ブランド、インセンティブ、リスク、開示などのバランス
   開示することにより生じるリスク:うそをつくか、つかないのか?
   イメージ戦略:エージェント、ブランド化、摩擦、超過利潤?
   経済的利益追求と倫理の一致:内部化として取りこむという主張

・東さん
   価値の多様性、コミュニケーションの莫大化

・公文先生
   なぜ消費者は情報を開示するのか?
   隠されてないという保証がほしい。
   個人情報が不当に使われないという保証はほしいが、定式化すると問題が生じる
   直接的な解答でなく、間接的な解答 : はじめのニーズからのずれ

・東さん
   小さな合意形成はできても、大きな合意形成ができない
   情報社会における社会貢献
   ユーザーの要望だけでは「有料オプションを半額にしろ」ということが来る

・吉田先生

   正しい解答があると考えるべきでない。試行錯誤が常に必要。
     社会主義ですら長い目でみれば、必要な試行錯誤だった。
     状況が変われば、望ましい、望ましくないというのがある。
     現在の歴史的趨勢として分権構造が優位ということはある
   組織の目標達成と既得兼営の解体、実行
     既得権擁護構造=集権的か、分権的か?
     例 小泉首相=参加により既得権益の解体を行う
     例 グローコムの改革=諮問があって形ができても、それを実現するには公文先生のリーダーシップが必要。実行レベルでは、参加ではできない。責任の取り方。
   イデオロギーでなくケース・バイ・ケース

   自覚的な参加と非自覚的な参加がある
     例 グローコムのフォーラム : はてなの企業
        デザインを100%完成させなくとも、ユーザーが教えてくれる
     現代的な意味で「参加」は、コレクティブブレーンを利用している。
        個人か組織か?
        ケースバイケースで、その都度で集合的ブレインの活用
        民度があがっている。
     常に再検討が必要であるということが大事

・東さん
    社会主義ということを前提に公文先生、吉田先生が話しをされている。
    プロセスのあり方はいろいろな形がある。
    出てくるアウトプット、社会の形

・国領さん
    インターネットと電話の技術の比較
      電話の上にアプリケーションを載せるのはほとんど不可能
      ネットの上にはいくらでも載る
    ソフトウェアの特性?
    対して、社会主義の考え方は巨大な生産設備をイメージしていた。
    物理的な基盤とアンバンドリングされている状態。
    MSのOSのようにこれまでなかった独占も産まれている。
    過去の社会主義の設計主義といまの話しの違いが認識できない。

・公文先生
   人間がいる分権でも資源がたりない? = コンピューターにまかせてしまえ?
   [東さん]個人的にアウトソースすることが日常化している。
   「国領先生」アカウンタビリティー、オーディット。独占してること自体は悪ではない。

・吉田先生
   世代ギャップ:
     ニューコンサバの根拠=ハイエクの自生的秩序 = レジュメ参照
   排除、それ以外に何らからの操縦の可能な環境のコントロール
     人々の意思決定を操作可能である
     それが行われているかどうかのチェック機能を取りこむべき
     鑑査法人に対する社会的なチェック
   プラットフォームの概念
     進化の途中:語意、文法、文脈、活動 (境界状態?)
     → 情報機構が成立する最低条件 = 共通の言語空間が設計の大前提

・鈴木さん
   政治:参加?
     参加 vs 参加しない の二元論
   人のためにやることのほうが人は残酷になれる
   政治とは敵と味方を区別すること
   うちとそとの区別
   部分最適全体最適部分最適の方が強い
   このための設計!
     参加することがデフォルトでなく、参加しているように見える、ということ
       参加していることが自覚的なシステム
       参加のしきいちを低くする、楽しくする
       倫理的なメッセージ:社会性そのもの
        反社会 と 脱社会 :反では参加している、脱は参加しない

・東さん
   脱社会=情報社会で政治、経済に参加するというよりも、社会にかかわらなくてもよくなってきていることに興味がある。
    例 24時間のコンビニ = 一人で生きていけるインフラ
   社会全体が非同期的になってくる。人々の協調をどう作るか?
   情報社会は合意形成がしにくい。では、どう人々を誘導して、社会をつくるのか?


■追記 H20.4.23

隔世の感がある。

MIAUなどのネット規制法案に反対する共同声明に、公文俊平が署名している。

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私は公文先生を「偽善者」だとは全く思わない。詳しい内情は全く分からないが、このシンポジウムのあとの話を池田信夫さんがしていらっしゃるのだと思う。「敵と友」の弁別が政治の基本であるなら、戦うべき相手はネット上にはほとんどいない。それは、池田さんが一番わかっていらっしゃるはず。私ごとき門外漢がなにかをもうしあげるべきではないと百も承知だが、たとえばこの05年の会を思い出してほしい。

世代交代とはとかくうまくいかないものだ。身の丈にあわないものを仕立て直す苦労よりも、各世代毎に新たに作り直した方が早いのではないだろうか?譲り渡す儀式がうまくいかず、譲り渡すべきもの自体を破壊してしまうことは「リア王」を引き合いにださずともよくあることだ。

そうそう、このglocom 2005の会場となったホテルはもう解体されてしまって跡形もない。

■賛成!!!!

「智場」が本当にうまくいくのかどうかの、格好のテストケースだと思うからだ。

2008-04-23 - akehyon-diary