HPO機密日誌

自己をならふといふは、自己をわするるなり。

新ネットワーク思考 LINKED: The New Science of Network

来週にそなえて、ずっと読まずにとっておいた「新ネットワーク思考」を読んだ。かなり面白かった。バラバシがいかにして、ネットワークの研究を通して米上の法則による記述にいたるか、スケールフリー・ネットワークの発想にいたるか、そしてその応用として幅広い問題を考察している。

正直、本書を読了して安心したのは、これまで断片的な知識で構成し、本ブログにて展開してきた内容と本書の主張が合致しているということだ。以下、本書の章だてと私が過去に書いたブログとの対象を試みる。

第一章 序
・大脳とココログ 大脳とココログ: HPO:個人的な意見 ココログ版
・世の中狭い 追記 世の中狭い: HPO:個人的な意見 ココログ版

第二章 ランダムな宇宙

第三章 六次の隔たり
・curated consumptionから連想するもの curated consumptionから連想するもの: HPO:個人的な意見 ココログ版

第四章 小さな世界
・世の中狭い 世の中狭い: HPO:個人的な意見 ココログ版

第五章 ハブとコネクタ
・ランダムドットキネマトグラムとランダムドットステレオグラムからの発想 ランダムドットキネマトグラムとランダムドットステレオグラムからの発想: HPO:個人的な意見 ココログ版
・ベキ乗の法則とプロ野球1リーグ制 ベキ乗の法則とプロ野球1リーグ制: HPO:個人的な意見 ココログ版

第六章 80対20の法則
・エージェントスミス的なもの、草薙素子的なもの、あるいは、ネットは世界をつなげるのか? エージェントスミス的なもの、草薙素子的なもの、あるいは、ネットは世界をつなげるのか?: HPO:個人的な意見 ココログ版

第七章 金持ちはもっと金持ちに
・見えない自由がほしくて、見えない銃をうちまくる −ネット上の貨幣としての認知にインフレーションは来るのか?− 見えない自由がほしくて、見えない銃をうちまくる -ネット上の貨幣としての認知にインフレーションは来るのか?-: HPO:個人的な意見 ココログ版

第八章 アインシュタインの遺産
・距離、時間、そして統治と戦争 距離、時間、そして統治と戦争: HPO:個人的な意見 ココログ版
・ブログの森で語りあう  ブログの森で語りあう: HPO:個人的な意見 ココログ版

第九章 アキレス腱
・あなたは誰? あなたは誰?: HPO:個人的な意見 ココログ版
恒久平和 恒久平和: HPO:個人的な意見 ココログ版

第十章 ウイルスと流行
・大絶滅を生き延びた我らの先祖のために 大絶滅を生き延びた我らの先祖のために: HPO:個人的な意見 ココログ版

第十一章 目覚めつつあるインターネット 
・[書評] リンクと力:ウェブ上でリンクすることの政治経済学 [書評] リンクと力:ウェブ上でリンクすることの政治経済学: HPO:個人的な意見 ココログ版

第十二章 断片化するウェブ
・平和を乱すもの 平和を乱すもの: HPO:個人的な意見 ココログ版

第十三章 生命の地図
べき乗の法則と首都圏経済白書 べき乗則と首都圏経済白書: HPO:個人的な意見 ココログ版

第十四章 ネットワーク経済
・[書評] オンラインゲームの中の仮想通貨の分析 [書評] オンラインゲームの中の仮想通貨の分析: HPO:個人的な意見 ココログ版
・[書評] 都市経済、 テクノロジー、 クラスタ、 そして、 べき乗の法則 [書評] 都市経済、 テクノロジー、 クラスタ、 そして、 べき乗則: HPO:個人的な意見 ココログ版

第十五章 クモのいないクモの巣
・麗しい澤 麗しい澤: HPO:個人的な意見 ココログ版


いかがだろうか?割といい線をいっているのではないかと自画自賛している。実は、これは私の力ではまったくない。私が以前認知科学の徒であったからとか、いまリアルでビジネスをしているからとかいうよりも、正直禅があったから、ネットワークへの理解ができ発想できたのだと感じる。もっといってしまえば、道元が書き、田里先性が世に問い、私の禅の師が解説してくださった世界がそのままネットの世界の記述とそっくりだったということだ。ネットワークも所詮人間がつくったものだし、禅における真実の範囲内であったということだろうか?

本書の内容にもどれば、これも偶然なのかもともと私が興味があったからなのか、業績からではなくそのあまりの奇人ぶりで私が大好きなエルデシュという数学者や私と以前仕事をいっしょにしていたスタッフがくれた「ティッピングポイント」という本がでてきたのもうれしかった。エルデシュとどれくらい近いかを示す「エルデシュ数」にとどまらず、エデルシュの研究対象自体がグラフ理論というよりも私には位相幾何学の問題のような気がしたが、ネットワークに応用可能な分野の先駆者であったそうだ。ちなみに、エルデシュがどれくらい奇人かというと、子どもを「イプシロン」と呼び、突然見ず知らずの家のドアをたたきそのまま居候してしまうなど、エピソードに事欠かない。でも、どのエピソードを聞いても自分のエゴがないというか、こころあたたまる奇行のように私には思えた。

ティッピングポイント」は本当に良書だ。今考えれば、ニューヨークの地下鉄の浄化作戦から、軍隊組織の編成方法、靴の流行などこの本で扱われた問題は、かなり本書による思考により説明可能であろう。たとえば、札幌のすすきのでも応用されているという「壊れた窓理論」は、ネットワークというよりも「ボーズ・アインシュタイン状態」的に収まるべ状態に収まるということかもしれない。

ティッピング・ポイント―いかにして「小さな変化」が「大きな変化」を生み出すか

ティッピング・ポイント―いかにして「小さな変化」が「大きな変化」を生み出すか

軍隊の編成方法や、ある会社の200人を超えたら新しい工場を作るという経営方針は、本書で扱われている内容を超えるのかもしれないが、フリースケール・ネットワークとはいえ、ハブである人間の持ちうるリンクの臨界点を仮定すればとける応用問題なのかもしれない。いわゆる一定の数のノードがお互いに緊密なリンクをもった「小さな世界」の臨界点だ。一人の人間のもちうるリンクの臨界点については、mixiやグリーを使って少々観察を行いたいと感じている。